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2009年7月8日水曜日

タイのあれこれ (4)-カオパンサー(雨安吾入り)



(スーパーマーケットの一角にある「タンブン・セット」コーナー)


 本日7月8日、タイは「入安居日(いり・あんご・び)」(タイ語でカオパンサー)で休日、昨日の「三宝節」(タイ語でアーサンハ・ブーチャー)に続いて二連休となる。

 このカレンダーは陰暦である。三宝節は陰暦8月の満月の日、三宝とはいうまでもなく仏・法・僧の三宝のこと。

 私が机上において使っているタイの卓上カレンダーには、当然のことながら記載されている。


カオパンサー(雨安吾入り)

 「入安吾」とは、「雨安吾(うあんご)」に入る日、という意味だ。

 雨安吾とは北インドや東南アジアでは、乾季・暑気・雨期の三季のうち、雨期の3ヶ月間のことをさしていう仏教要語のことで、英語では Buddhist Lent という。

 Lent とは、キリスト教でいう四旬節(レント)のことだ(注)。


 ちなみに余談だが、『堕落論』で有名な作家・坂口安吾のペンネーム「安吾」はここからとられている。

 「戦後無頼派」として太宰治・檀一雄と並び称された坂口安吾の本名は、坂口炳五(へいご)、実は東洋大学で印度哲学を専攻した人であった。

 睡眠時間4時間に切り詰め仏教書、哲学書を読み漁る猛勉強の生活を1年半続けて、遂に神経衰弱に陥ったほどだという。

 その神経衰弱を、サンスクリット語(梵語)、パーリ語、チベット語など語学学習に熱中して克服したとというのだからこれも半端じゃない。しかも、ラテン語、フランス語も学んだというから、実は無頼派はポーズで、本当はきわめて求道的で、クソマジメなまでの人だったのだ。


 さて、雨安吾(うあんご)だが、本日より約3カ月間、僧侶は基本的に僧院から出ずに修行に励むことになっている。外に出るのは早朝の托鉢だけである。

仏教教団で、修行者たちが一定期間一か所に集団生活し、外出を避けて修行に専念すること、またその期間をいう。雨期の定住。サンスクリット原語 varsa は雨、雨期、歳を意味する言葉で、インドでは春から夏にかけて約3か月続く雨期の間は、外出が不便であり、またこの期間外出すると草木の若芽を踏んだり、昆虫類を殺傷することが多いので、この制度が始まったとされている・・(後略)」(出典:『岩波 仏教辞典』より。ゴチックは引用者による)


上座仏教における短期出家と出家休暇

 タイではこの機会に、短期出家する男性も多い。

 東南アジアの上座仏教圏では、男子たるもの一生に最低一度は出家すべしという不文律があるためだが、、雨安吾のあいだ、まるまる3ヶ月間出家するという者はだいぶ減ってきており、近年では通常3週間、短い場合1週間だけというお手軽なケースも少なからずあるらしい。 

 何よりもスピードが重視される資本主義、なんともせわしない時代になってしまっているのである。
 
 タイの会社では、有給の「出家休暇」を認めている会社が多い。

 日本の「就業規則」でも規定するもののほかに、基本的に徴兵制のタイでは「兵役休暇」と「出家休暇」についてはきちんと規定しているケースが多い。

 以下は、私も作成にかかわった、ある日系企業の就業規則から抜粋したものである。なお正文はタイ語である。

 第●●条 出家休暇
 勤続一年以上の正規従業員は、連続して15日(休日も含める)を超えない範囲内で、有給の出家休暇を取得する権利を有する。休暇中は、下記条件および規則に従わなければならない。
(1) 休暇を取得する従業員は、男性従業員で、仏教僧侶もしくは得度式を行う僧侶より、仏教の戒律もしくは習慣に従い、出家することを許された以外の他の宗教を信仰してはならない。
(2) 出家休暇の取得は一度限りとする。また比丘(=成人僧)としての出家のみ認められ、沙弥(=少年僧)としての出家は含まない。出家休暇は、出家前の準備のための休暇を含め、出家していた日を合計し15日を超えてはならない。この中には休暇中の休日も含まれる。
 従業員は、休暇日の30日以上前に所属長に出家休暇を取得する旨を報告しなければならない。復帰したら出家を証明するもの、または得度式を行う僧侶もしくは所属する寺の住職が発行した出家証明書を、職場復帰初日に会社に提出しなければならない。


 出家期間短縮化の流れは、こういった規程の影響もあるのだろうか。出家する男子そのものも減ってきているという話も耳にする。もちろん大乗仏教が中心の華人系タイ人には、そもそも短期出家する慣習はないが、上座仏教を信じる華人は一般のタイ人と同じである。

 バンコクなど都市部では、資本主義と親和性の高いキリスト教に改宗するものもある一方、禁欲的な仏教新宗派であるサンティ・アソークのような教団も根強い人気をもっている。1992年の民主化運動のリーダー、チャムロン退役陸軍少将も信者の一人として有名だ。


資本主義国タイのお手軽なお布施事情

 また近年、仏教僧侶による不祥事があとを絶たないことも問題になっている。まさに日本語の「坊主丸儲け」というコトワザどおりの銭ゲバ坊主や、強姦殺人事件の犯人になった破戒僧など、多くが社会問題化している。

 不景気が進行するなかで、証明書をもたないニセ坊主も多数摘発されているらしい。袈裟を着ていれば托鉢でタダ飯にあずかれるというわけで、バンコク市内でも少なからずいるときく。

 出家僧に差し上げる托鉢ですら自分で用意せず、スーポーマーケットで売っている「Tamboon Set」(タンブン・セット)で済ませてしまう人も少なくないようだ。

(冒頭の写真を拡大 プラスチック製のバケツの入ったお布施セット)

黄色いバケツに缶詰やタオル、医療品などがセットになった詰め合わせである(写真参照)。

 なんでもお手軽に済ませてしまう資本主義国タイの現状である。金銭を介した関係が、在家信者と出家僧のあいだにも拡がっている。


 何事であれ、昔の常識のままで判断ができないのは、タイも例外ではない。今後もさらに大きく変化していくことだろう。

 だから、昔タイにいたことがある、という人の話はうのみにしてはならないのだ。古き良きタイはいまいずこ?


(注)レント: Ash Wednesday から Easter Eve までの日曜日を除く 40 日間。荒野のキリストを記念して節食や断食または懺悔を行なう。Lent 期間中の第 5 日曜日を Passion Sunday、最後の日曜日を Palm Sunday といい、Easter 前の一週間が Holy Week でその金曜日が Good Friday (『研究社・新英和辞典』より)


タイのあれこれ(5)につづく。なお、掲載は不定期ですが、まだまだ続きます。

         
       
PS 読みやすくするため改行を増やし、小見出しをつけた。写真を一枚追加した。 (2014年1月21日)




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・・タイのお寺(ワット)は地域社会のコミュニティセンターである!

今年も参加した「ウェーサーカ祭・釈尊祝祭日 2010」-アジアの上座仏教圏で仕事をする人は・・

書評 『「気づきの瞑想」を生きる-タイで出家した日本人僧の物語-』(プラ・ユキ・ナラテボー、佼成出版社、2009)-タイの日本人仏教僧の精神のオディッセイと「気づきの瞑想」入門

バンコクの高架鉄道 BTS のプンナウィティ駅から見える巨大な仏塔ワット・タンマモンコンにいってみた(2012年11月15日)

(2014年1月20日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)






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