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2009年8月17日月曜日

書評 『朝青龍はなぜ強いのか?-日本人のためのモンゴル学-』(宮脇淳子、WAC、2008)-モンゴルという日本人にとっての「異文化」を知る上で、信頼できる手頃な入門書




モンゴルという日本人にとっての「異文化」を知る上で、信頼できる手頃な入門書

 副題にある「日本人のためのモンゴル学」、内容はこれに尽きる。

 30年以上にわたってモンゴル史を研究してきた著者が、日本のマスコミによる朝青龍バッシングをきっかけに企画・執筆した一般向けのモンゴル紹介書である。

 朝青龍(本名 ドルゴルスレン・ダグワドルジ)が横綱になったことは、日本の相撲の歴史においても、同時にモンゴル国内においても画期的なことであったことはいうまでもない。

 しかし、保守的な日本相撲界は、朝青龍を横綱としての「品格」がないと断罪し、マスコミはそれに付和雷同、一連の騒動が収まった後も、同じモンゴル人の横綱・白鵬(本名 ムンフバト・ダヴァジャルガル)を一方的に持ち上げ、朝青龍をヒール(悪役)として位置づけるという、きわめてステレオタイプな見方を崩そうとはしない。

 日本のスポーツ・ジャーナリズムの質が正直言って高くないことは、サッカーの中田英寿や、メジャーリーグのイチローがあらゆる機会をつうじて主張してきたことである。「国技」とされてきた相撲もまた例外ではないようだ。

 もちろん強ければいいというものでもないが、強くない力士なんてTVで見ていて面白くもなんともないではないか。朝青龍が強いことは間違いない事実なのだ。

 ではなぜ朝青龍は強いのか。

 著者はモンゴル文化を、遊牧文明、モンゴルの歴史、日本との関係、にわたって広くまんべんなく解説することによって、似たような顔をした同じアジア人とはいっても、日本文化とは根本的に異なる「遊牧文化」であることを示し、間接的な形で朝青龍の強さが生まれてきた背景を説明する。

 私が下手な要約をするよりも、小見出しをいくつか抜粋するので目を通してもらうのがいいだろう。

 ・「まわりに合わせる」という考えのないモンゴル文化
 ・モンゴルには「長幼の序」はない
 ・モンゴル人にとってのいい男、いい女
 ・遊牧生活を維持するため、男と女の役割分担は明確だった
 ・夫婦喧嘩をすると、「出て行け」ではなく「オレが出て行く」
 ・北の遊牧民は南の農耕民をばかにしていた
 ・モンゴル人が中国人を嫌いな最大の理由
 ・これだけ違う日本人の美意識とモンゴル人の美意識
 ・二大国の狭間で今日まで独立を保ってきたモンゴル外交の巧みさ
 ・日本の「文化」から世界の「文明」になった相撲

 どうだろう、モンゴル文化の特性がなんとなく伝わってきただろか。

 また著者は、第2章「モンゴル女性秘話」において、女性研究者としての問題意識から、モンゴルの遊牧文化において、女性の地位がきわめて高いことを明らかにしている。これは歴史をとおして一貫しており、従来の男性研究者が気がつかなかった盲点を指摘しており読み応えがある。朝青龍も、白鵬も母親がともに大学卒のインテリなのに、父親に学歴がないことの意味を説明しており、たいへん興味深い。

 「モンゴルでは、他人に頼らない、甘えない、自分自身の判断を大切にする、ということが人間として最も大切なことなのだ。そしてこれが、厳しい自然環境のなかで遊牧生活を送ってきた歴史から生まれたモンゴル文化なのである」(p.217)。

 ここまで読めばもう、なぜ朝青龍がなぜ強いのか、答えは出たも同然だろう。

 朝青龍や相撲にはあまり関心がない人にとっても、モンゴルという日本人にとっての「異文化」を知る上で、信頼できる手頃な入門書として推薦したい。


■bk1書評「モンゴルという日本人にとっての「異文化」を知る上で、信頼できる手頃な入門書」投稿掲載(2009年8月13日)

            



PS 白鳳もまた典型的な「モンゴル人」であった

朝青龍が角界を去ったあとの王者となったのが白鳳であるが、白鳳もまた地金が出てきたというべきか、やはりモンゴル人なのだなと思わざるを得ない数々の事件を引き起こしている。そんな折り、『モンゴル力士はなぜ嫌われるのか-日本人のためのモンゴル学-』と副題は据え置いたまま、タイトルを変更して改訂のうえ、WACから2017年12月に復刊されているので、新規情報として紹介しておこう。(2018年5月3日 記す)










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