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2009年10月6日火曜日

『ストロベリー・ロード 上下』(石川好、早川書店、1988)を初めて読んでみた(2009年10月6日)



  このブログにも断続的に書いているが、いまなお"本と闘っている最中"である。

 "どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ"、というのは満洲で匪賊討伐にあたった陸軍歩兵の身上を歌い込んだ軍歌 『討匪行』の歌い出しだが、いつ終わるか果てのない旅路は、ギリシア神話のシジュフォスの苦しみにも比すべき心情だ。ちと大げさすぎるか・・・

 整理対象となった数々の本を、廃棄処分にする前にとりあえず目を通しておこうという考えから、入手してからだいぶ時間の経過した"旧刊本"をここのところ読んでいる。
 書評というのものは一般的に新刊書を扱うことが多いが、いい本は必ずしも新刊本だけではない。忘れられた旧刊書にもなかなか捨てがたい本があるものだ。



 本日紹介するのは、作家・石川 好(いしかわ・よしみ)『ストロベリー・ロード 上下』(早川書店、1988)である。

 1965年から米国に農業移民として4年間滞在した、伊豆大島出身の青年の青春記である。本が書かれて出版されたのは体験から23年後、そしてこの本を私が読むのは、出版と同時に入手してから21年後、現時点からみれば著者の体験はなんと今から44年前(!)のことになるわけだ。ずいぶん、というよりものすごく昔のような気がする。

 18歳で長兄を頼って渡米した先はカリフォルニア州の南部のイチゴ農園。この時代、日本人移民は禁止されたままだったので、「短期農業労務者」(略して短農)という方法で入国したらしい。また東欧共産圏からの難民を対象にした「難民救済法」(!)の枠組みで入国した日本人もいるらしい。高度成長が加速した時代の日本では、まだ北米か南米で一旗揚げることを夢見る日本人がいたのである。移民船は戦後もでていたのだ。

 当時はベトナム戦争の真っ最中であった。ハイスクールの級友も何人も徴兵されたらしい。

 カリフォルニアは南北に長い州で、一つの国ぐらいの大きさなので、北・中・南の3つに分かれているが、著者が滞在していたのは南カリフォルニアでロサンゼルスの近く、ハイスクール、そしてジュニアカレッジ(=二年制の短大)に通いながら長兄のストロベリー・ファームを手伝う。

 さまざまな日系一世、日系二世、そして農場で働く季節労働者の不法入国のメキシコ人、フィリピン人、マジョリティの白人系米国人・・・とのかかわりを、少年から青年に移行する自らの五感をつうじて感じ、そして自らのアタマで考えたことを描いたノンフィクションでもある(・・もちろん脚色やカリカチュアライズもあろう)。

 米国での体験を踏まえたうえでいま読んでみると、いちいちうなずくことの多い内容である。私のビザは Non-Immigrant の F1ビザで原則就労できないので不法入国者とは接点はなかったが、日本人そのものが少なく、全米各地出身の日系人との接点があったので、いろいろな出会いと観察があった。

 日本語は聞いて話せるが、漢字は全く読めない日系二世。日本語は聞いてわかるが、英語のほうがラクな日系二世。日本語はまったく理解できない日系二世・・日本人というのはいったい何なのだろうか?米国人になるとはどういうことなのだろうか?アイデンティティとは何なのだろか?・・といろいろ考えることがあった。
 
 アタマとカラダを使って体験し、思索した内容というのは、時間的にも空間的に異なっても共通するものがあるようだ。著者が自らの体験を振り返って書いているのが40歳代に入ってからのことであるので、その意味においても、いま40歳代の私が読むのも、なにかしら意味のあることかもしれない。



 この本を入手したのはまだ私自身アメリカに行く前で、その当時すでに石川 好は著名人であったが、農業移民(!)だった、ということに大きな関心を抱いたのであった。

 その当時の私は仕事が猛烈に多忙で夜中まで働き、しかも米国留学のための準備に毎日追われていたので、倒れる寸前までいっていた。

 この本を買ったのは、もちろん米国に関心があったからだが、当然のことながら読むヒマもなかったのである。著者の初期の作品である、『カリフォルニア・ストーリー』(中公新書、1983)『カリフォルニア・ナウ ー 新しいアメリカ人の出現』(中公新書、1984)はすでに読んでおり、強い印象を受けていたのだが。



 1990年の7月にサンフランシスコから初めて米国に足を踏み入れた私は、石川好とは違って10歳近く歳がいっていたし、南カリフォルニアではなく、北カリフォルニアのバークレーに2ヶ月間滞在してUC Berkley のSummer Extension で Business English という授業をとって、9月から本格的に始まるM.B.A.の授業の前の準備をしていた。かの有名な『いちご白書』の舞台、リベラルな風土のバークレーである。

 授業が午前中に終わってしまうので、半分は遊んでいたようなものだが、バークレーでは我が人生のなかでも、もっとも楽しい日々を送り、いろいろな経験をすることができたのであった。日本をでる直前まで死ぬほど仕事をし、おまけに胃にポリープまでできたためだ。陽性だったようなのでいまだに生きているが。

 このあと東海岸のニューヨーク州に移ったので、陽光にあふれたカリフォルニア、とくに北カルフォルニアはのちのちも長く思い出の地として好印象を抱いたまま現在にいたっている。東海岸と西海岸では開発には数十年の時間差があり、東海岸では建物は薄汚れて汚く、短い秋が終わると半年に及ぶ長い冬を耐えなければならなかったからだ。東海岸にいたときは、日本へのホームシックよりも California Dreaming な日々だったわけだ。

 このときの話は機会があれば書いてみたい。このブログではあまりアメリカ時代のことを書いてないようだしね。

 

 著者が作中で述懐しているように、1965年から1970年にかけて、米国も日本も大幅に変化したのである。そういう端境期に米国で汗を流してカネを稼いでもまれた経験が、石川好という人の土台を作り上げたのだろう。

 単行本も文庫版もともに絶版ないしは長期品切れのようだが、図書館で借りて読んでみたらいいだろう。とくにカリフォルニアに住んだ経験のある人には、なにかしら追体験めいたものを感じることがあるかもしれない。

 私も、実は日本に帰らないでそのまま米国に居続けようかと真剣に考えていたので、著者の体験と思索はよく理解できるのだ。



 ひとは18歳までの経験ですべてが決まってしまう、といった英国の作家がいるらしいが、現代では平均寿命も延びているのでもう少し長めにとってもいいのかもしれない。

 経験というものは、自ら積極的にならない限りできないものである。いくつになっても新しい経験をすることも可能だ。とはいえ、感受性のレベルが下がってゆくのは避けられない。心の持ち方次第でもあるのだが・・・


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