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2010年2月20日土曜日

映画『インビクタス / 負けざる者たち』(米国、2009)は、真のリーダーシップとは何かを教えてくれる味わい深い人間ドラマだ






監督・製作:クリント・イーストウッド
主演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン


 「2010年 FIFA サッカー・ワールドカップ」が開催される南アフリカ、この映画は同じフットボールでも足しか使わないアソシエーション・フットボール(=サッカー)ではなく、足も手も使うラグビー・フットボールのドラマである。

 長年にわたって続いてきた「アパルトヘイト」(人種隔離)政策が終わり、1990年に28年の獄中生活から解放されたネルソン・マンデラは、1994年には南アフルカ初の黒人大統領になった。

 マンデラにとっての課題は、「アパルトヘイトを理由にした経済制裁」が解除されたことによって可能となった、外国からの直接投資を陣頭指揮して誘致するだけでなく、少数派であるが経済や軍と警察の実権を握る白人層と、圧倒的多数を占める黒人層との国民的融和を図り、国民統合をいかに実現するかという大きな政治的課題であった。

 そこで国家を率いる指導者(リーダー)であるマンデラが目をつけたのが、目前に迫っていた「1995年 第3回ラグビー・ワールドカップ」である。アパルトヘイトのため、ワールドカップから除名されていた南アフリカは、この大会は開催国であり、かつ初出場だったのである。

 スポーツが国民統合の「求心力」となるのは理由がある。なによりもスポーツは一般人にもわかりやすく熱狂しやすい。スポーツのもつ特性には、感動・ひたむきさ・爽やかさ・チャレンジ精神・フェアプレイ精神といった好感度なイメージがあり、見る者をエキサイトさせ、巻き込んでいく。これは、芸術などの文化活動と比較した場合、対象がより大衆的で、かつ効果がダイレクトにあらわれるということでもある。これは現在開催中の「2010年 バンクーバー・冬期オリンピック」も例外ではない。

 ただし、近代スポーツ発祥の地である本家本元の英国では、サッカーが主に労働者階級のスポーツであるのに対し、ラグビーは上流階級のスポーツである。南アフリカではこの構図がさらに人種が重なることによって、白人エリートのスポーツであるラグビーが、果たして国民意識統合につながるのか、誰もが疑問に思ったことだろう。

 しかし、国家の政治指導者(リーダー)であるマンデラ大統領がとった行動は、ワールドカップのスケジュールを最優先し、代表ラグビーチームの白人主将(キャプテン=リーダー)を直接官邸に招いて歓談し、奮起を促したことだった。


 マンデラをして、政治犯として投獄されていた28年間(1962-1990)を精神的にもちこたえさせたのは、英国ヴィクトリア朝時代の詩人による Invictus(不屈)という詩であった。そしてこの詩句は、代表ラグビーチームの白人主将をもインスパイアしていく・・・。

 I am the master of my fate: I am the captain of my soul.

 実に味わい深いコトバではないか。噛みしめると勇気がわいてくる。

 人々の気持ちをインスパイアし、もてる実力以上のチカラを引き出すには何をしたらいいのか。

 この映画は、あらゆるレベにおいて必要なリーダーシップについて人間集団である組織の求心力をいかにつくりあげるかという課題にかんする生きた教材といえる。コトバとそれにともなう行動が、いかに人間の気持ちをインスパイアするものであることか。

 依然として多くの問題を抱えている南アフリカではあるが、同じく白人支配を脱しながらも、独裁者が君臨し、経済的破綻国への途をひたすら突き進んでいるジンバブエ(旧ローデシア)と比較すると、南アフリカにネルソン・マンデラというリーダーがいたこと、それに応えた人々がいたことが、いかに大きなチカラとなったか、感動的なフィナーレとともに味わっていただきたいと思う。

 それにしても奇跡は起こりうるのである! 
 この映画は実話(true story)に基づいたものなのだ。

日本版オフィシャルサイト
米国版オフィシャルサイト
オフィシャル・トレーラー(YouTube)





<補足コメント>

 身に覚えのないのに終身刑を宣告され投獄された囚人が脱獄して自由を手に入れる内容の『ショーションクの空に』(1994 The Shawshank Redemption)では主人公の一人を演じた、米国の名優モーガン・フリーマンの演じるネルソン・マンデラは真に迫ったものがある。今回の映画は出獄後の政治家を演じているが。トレーラーはこちら。

 それにしても監督としてのクリント・イーストウッドは一作ごとに素晴らしい映画を製作・監督している。いまではかつての名優としてのクリント・イーストウッドもさることながら、次の作品を期待したい監督としての存在が大きくなった。

 なお、「1995年 ラグビ-・ワールドカップ」の結果については Wikipedia の項目を参照。

 ネルソン・マンデラを、そしてラグビー代表チーム主将をインスパイアした詩 Invictus(不屈)の原文は以下のものである。

Invictus  by William Ernest Henley (1849–1903)

Out of the night that covers me,
Black as the pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.


In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.

Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds and shall find me unafraid.

It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll,
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.


<関連情報>

 「スポーツのもつ求心力」については、日本では企業が「企業スポーツ」という形で活用してきた。
 今回のバンクーバー・オリンピックでも男子スピードスケートで銀メダルと銅メダルを獲得した日本選手が、ともに日本電産サンキョー(旧 三協精機)に所属する選手である。日本電産サンキョー・スケート部のサイトを参照。
 長野県・諏訪の名門精密機器メーカーである三協精機を買収した、京都に本社のあるグローバル企業・日本電産の創業社長・永守氏は、従業員の解雇を一切行わないだけでなく、従業員の求心力となるスポーツのもつ重要性を理解したうえでスケート部を廃部にしなかった。さらに、今回のメダル報奨金の半分をポケットマネーから支出している。
 もしご興味があれば、私が1997年に行った講演録をご覧いただきたい。「企業とスポーツ」①「企業とスポーツ」②
 1時間の講演を要旨としてまとめたものである。

 リーダーシップについては、書評『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)を参照。真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本、というタイトルでこの本を紹介している。南アフリカのネルソン・マンデラも、一国の指導者として、真のリーダーシップを発揮した人である。

 人を動かすコトバについては、岡倉天心の世界的影響力-人を動かすコトバのチカラについて-という文章をブログに書いている。

 南アフリカ出身の作家ローレンス・ヴァン・デル・ポスト(1906-1996)についてブログに書いた文章はこちら。原爆記念日とローレンス・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜』。20歳台で日本に来たこともある日本通の作家は、運命の皮肉で英国陸軍のコマンド部隊大佐としてインドネシアのジャワ島で日本軍と戦い捕虜収容所に収容されることになり・・・


P.S. 追記

現代時評:「南ア・アパルトヘイトの今昔」 Ken(2010年2月23日号)
・・マンデラ大統領就任前に南アフリカに商用で入国した著者の回想録。
 
■■ 旧宗主国、英国系の白人は内心絶対的な白人優先の潜在意識もあるが、同じ白人でもユダヤ人やアフリカーナ、つまり旧オランダ系ボーア人の後裔などは二流白人の地位に甘んじてい、白人優先の南ア共和国という意識は希薄であった。マンデラ氏の前任者デクラーク元大統領もアフリカーナである。
■■ ここまで考えてくると、南アのアパルトヘイトは有色人と白人の争いというよりむしろ、貧乏で怠惰な有色人とまじめな有色人の間の争いという方が、正鵠を得ているかも知れない。 それをボクら日本人は
、「虐げられて可哀想な南アのアパルトヘイト」と、誤解していたのではなかったろうか。

 なかなか味わい深いコメントである。ぜひ全文をお読みいただきたい。(2010年2月23日記)



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書評 『南アフリカの衝撃(日経プレミアシリーズ)』(平野克己、日本経済新聞出版社、2009)-グロ-バリゼーションの光と影

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ

「ハーバード リーダーシップ白熱教室」 (NHK・Eテレ)でリーダーシップの真髄に開眼せよ!-ケネディースクール(行政大学院)のハイフェッツ教授の真剣授業

映画 『プロミスト・ランド』(米国、2012)をみてきた(2014年9月8日)-衰退するコミュニティ(=共同体)とプロミスト・ランド(=約束の地)
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(2014年9月15日 項目新設)
(2015年6月14日、2016年10月27日 情報追加)



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