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2010年4月20日火曜日

書評 『本当にヤバイ!欧州経済』(渡邉哲也、 三橋貴明=監修、彩図社、2009)




欧州経済へのレクイエム-欧州連合と欧州共通通貨ユーロについての真相を知るための必読書

 欧州の金融経済を専門としない私のようなビジネスマンが、日々の断片的情報をから大きな見取り図を描くことは難しい。
 著者のブログも見ていない私のような者にとっては、こういう形で単行本として一冊になったものを読むことで、はじめて事の重大さに気がつくことになる。

 欧州経済が想像以上に危機状況にあることは、本書に目をとすことで確信に変わった。サブプライム問題の震源地である米国よりもひどい状況にある欧州、われわれはすでに日本でバブル経済の崩壊と失われた10年(・・いや20年)を経験しているのだが、欧州経済の崩壊が、想像を絶するスピードと規模で一気に進行したこと、そして回復までの道のりがはるかに遠いことを思い知らされた。1997年のアジア金融危機の比でもない。
 デレバレッジ、レパトリエーション、リワインド・・・日頃聞き慣れない金融用語の意味も、恐怖とともにアタマのなかに刻み込まれることになる。

 サブプライム問題の首謀者であり真犯人であるドイツ銀行、欧州の金融システムに大きな影響を与えたドイツのヒポ・リアルエステート、爆弾を抱えたままのフランス、衰退する金融立国でかつ貯蓄率の低い英国の暗い見通し、不動産バブルの崩壊したスペイン、欧州経済崩壊の引き金となりかねない中東欧の新興諸国、そしてその中有東欧諸国に大きく貸し付けているスウェーデンの銀行、金融強化の流れの中、口座の秘匿性を維持できなくなったスイス・・・。
 これら各国の金融状況は、バブル崩壊のメカニズムを知っている人間にとって、これは恐怖以外の何者でもない現実である。また、そこから導き出される将来予測は暗澹たるものとしかいいようがない。
 
 おそらく、そうでなくても衰退過程にある欧州は、さらに衰退スピードに拍車がかかったというべきであろう。
 また、発行に際して国家の裏付けのないユーロの脆弱性政治主体である国家と通貨管理主体である欧州中央銀行(ECB)が別個の存在である二重構造ゆえに、政策決定のスピードが極度に遅い欧州連合の脆弱性。こうした事実から、われわれ日本人が得るべき教訓は実に多い。「友愛」にもとづくアジア連合など、愚策の最たるものであることがわかる。

 情報ソースも明示された本書は、欧州経済の現状についての正確な見取り図であり、また欧州連合と欧州共通通貨ユーロについての真相を知ることのできる警告書でもある。
 2009年11月の本書出版後も、時々刻々と悪化する欧州経済の状況が報道されているが、いまからでも遅くない、ぜひ本書を一読して情報武装することをすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「欧州経済へのレクイエム-欧州連合と欧州共通通貨ユーロについての真相を知るための必読書」投稿掲載(2010年4月6日)


<書評への付記>

 上記の書評を書いたあとにさらに追い打ちをかけるような事態が発生している。
 2010年4月15日に噴火したアイスランド火山が噴出させた大量の火山灰のため、欧州の主要空港が本日(2010年4月20日)現在でもロンドンのヒースロー空港は閉鎖されたままとなって、すでに6日目に入っている。
 航空会社が損害を被っているだけでなく、何よりもヒトもモノも移動が止まっているために、計り知れない大きなダメージを欧州の政治経済に与えている。

 現在の懸案事項であるギリシア問題も、スペインで開催された ASEM にもアジアから政治家が参加できない状況・・・
 アイスランド火山も現在は小康状態になりつつあるが、火山活動が収束したわけではなく、いつまた噴煙を噴き上げるかわからない状況だ。
 そうでなくても金融破綻によって大きな問題を引き起こしたアイスランド、今度は不可抗力の天災とはいえ、なにやらシンボリックな自然現象でもある。

 欧州経済が世界恐慌の引き金とならなことを祈るばかりである。


<ブログ内参考記事>          

「不可抗力」について-アイスランドの火山噴火にともなう欧州各国の空港閉鎖について考える