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2011年12月13日火曜日

書評『面接法』(熊倉伸宏、新興医学出版社、2002)ー 臨床精神医学関係者以外も読んで得るものがきわめて大きい "思想のある実用書"


臨床精神医学関係者以外も読んで得るものがきわめて大きい「思想のある実用書」

シンプルなグリーンの表紙に、シンプルなタイトルの小型本。しかも、医学専門出版社からの出版物で、臨床精神医学を専攻しない一般人にはまず目に触れることのない本だろう。

私はたまたまタイトルに引かれて本書を手に取ったが、この本は臨床精神医学以外のカウンセラーやコンサルタントなど、人の相談に対応する専門家はもちろんのこと、他者の相談に乗るということはどういうことか、他者とかかわることはどういうことか、日々悩み、考えている人には必読書といっていいのではないか、私はそう思うのである。

入門者向けの実用書なのだが、この本の内容はほんとうに深い。ところどころ臨床精神医学の専門用語や概念がでてくるので、専門外の人間には難しく感じる箇所もあるだろうが、きわめて平易に書かれたこの本は、いわば「思想をもった実用書」だといっても言い過ぎではないだろう。

面接の技法やテクニックを書いたハウツー本は多数あるが、理論的根拠まで書いてある本は少ない。この本は実用書でありながら、そういった類の本とはまったく性格を異にする。著者みずからのコトバで、事例をつうじて平易に解説しながら、理論的根拠までキチンと書いてある本こそが、ほんとうの意味で入門者向けの実用書というべきである。

読んだあとアタマだけでなく、ココロのなかになにか残るものを感じる。さらに折に触れて何度も繰り返し読むたびに新たな発見がある

こういう本はなかなか書けるものではない。著者の豊富な体験と長年の思索のなせるワザであろう。

知られざる名著として、臨床精神医学の専門家以外にもひろく推奨したい。


<初出情報>

■bk1書評「臨床精神医学関係者以外も読んで得るものがきわめて大きい「思想のある実用書」」投稿掲載(2011年1月20日)
■amazon書評「臨床精神医学関係者以外も読んで得るものがきわめて大きい「思想のある実用書」」投稿掲載(2011年1月20日)




目 次

この本を手にされた方に
Ⅰ. はじめに
1. この本の目的
2. 面接という体験
3. 心の専門家いろいろ
4. この本の使い方
Ⅱ. 面接とは
1. すぐれた面接
2. 面接という方法
3. 面接室と社会
4. 面接者が行うべきこと・行ってはならないこと
Ⅲ. 面接の実際
1. 「分かる」ということ
(ケース A氏)
2. 初回面接
3. 面接のゴール
(ケース B子)
Ⅳ. 面接で得られる情報
1. 来談理由
2. 構造化された観察
3. 「見立て」
Ⅴ. 面接の構成要素
1. 五つの要素
2. 聞くこと
3. 問いを立てること
4. 見ること
(ケース C君)
(ケース D婦人) 
5. 対等な出会い
6. 専門的関係
Ⅵ. 面接の展開
1. 分かること
2. 受け止めること
Ⅶ. 面接理論を学ぶこと
Ⅷ. ケース・レポートを書くこと
1. ケース・スタディ(症例研究)とケース・レポート(症例報告)
2. ケース・レポートの意味
3. ケース・レポートの書き方
4. 実践:ケース・レポート
Ⅸ. おわりに

エピソード
メドゥーサの視線
呪われた面接者
高位の面接者
道化の面接者
「見立て」とは何か?

理論
土井健郎の面接理論
sign・記号・徴候・症状
緊急事態
サイン・記号・徴候と実践理論
面接の理論
共感とは何か
科学者の観察、面接者の観察
自己と他者の出会い
日常語と専門語
「ともに眺めること」
論理・理論・メタ理論


著者プロフィール

熊倉伸宏(くまくら・のぶひろ)

1969年東京大学医学部卒業。1978年東京大学医学部助手。1981~1982年英国 Fulbourn 病院、および MRC 精神医学研究所に留学。1988年東邦大学医学部助教授。1994年東邦大学医学部教授。2006年メンタルヘルス・コンサルティション研究所開設。現在に至る(本データはこの書籍が刊行されたあとに出版された本に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

「面接者の視線」について考える上での一級書といっていい。入門書でありながら、きわめて深い洞察に基づいて書かれた本なのだ。

「匿名的観察者の視座」という視点のあり方がじつに興味深い。これはいわゆる世阿弥のいう「離見の見」に該当するもの。俗に言う「幽体離脱」にもつうじる視座である。著者のコトバをそのまま引いておこう。

客観的観察と心の臨床における観察には、決定的な相違点がある。人は自らが「見る」主体でもあるからである。観察することを止めた人間はいない。露骨に観察されることを、好む人もいない。面接の場では、そのように生きた他者がいる。来談者とは、面接者を観察する「不気味な他者」でもあるのだ。

客観科学的観察では、この意味での他者、主体としての他者は見えない。面接における観察の特徴は、観察すべきは来談者のみならず両者の関係そのものである。かつ、面接者の自己でもある。つまり来談者にとって面接者は、どう見えるのか。二人の関係は外部者から、どう見えるのかを観察する。比喩的にいうと、心の相談における観察は、観察者をも含めた二者関係を、二者関係の外部から観察する試みである。・・(中略)・・ちなみに、私は、その視点が面接室から天上まで浮動して動いていると感じる。

私は、このように自己の視覚から離れ、外在し、浮動する視座を、匿名的観察者の視座と呼ぶ。この第三者的視点は、客観科学的観察において想定される天上の視点とよく似ている。但し、面接で観察される世界は、脈を打つような生きた世界である。その生命的世界では、自己の視点は、もはや自己の身体に限局されることなく、その世界の何処にでも、自由に行くことができる。
・・(中略)・・

匿名的観察者とは実際の網膜の知覚ではなくて、自己の身体を超えたものである。平凡な言い方をすれば、「心の眼」である。そのような視座が生々しく体験される瞬間が、面接にはある。後に述べることであるが、匿名的観察においては、面接者と対談者が「一緒に見る」という体験が可能になる。そこに生じる「見守る眼差し」とは、人間的なつながりが、その本体である。(P.61~62)

とにかく深いのだ。コトバのひとつひとつが吟味に吟味を重ねて選択されている。専門用語もでてくるが、日本語の日常語に含まれる深い含蓄をすくい上げる著者の態度は、まさに臨床という実践をつうじて獲得されたものだ。

このほか「見立て」とは仮説的なストーリーであるとか、臨床精神医学を超えたものの見方がじつに参考になる。

ちなみに著者は、「甘え」という日本語の日常語をキーワードにした日本人論のロングセラー『甘えの研究』(弘文堂)で一世を風靡した精神医学者・土居健郎の弟子である。

この「見立て」という概念もまた土居健郎ゆずりのものである。



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