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2011年12月25日日曜日

書評 『聖書を語る-宗教は震災後の日本を救えるか-』(中村うさぎ/ 佐藤優、文藝春秋、2011)-キリスト教の立場からみたポスト「3-11」論


同志社大学に学んだプロテスタントの二人が語る、キリスト教を軸にしたポスト「3-11」論

出来の悪い生徒役を中村うさぎが演じて疑問を提出し、先生役を演じる佐藤優がその質問に答えながら、議論を発展させていくという対話本。

なかなかこの二人の掛け合いが面白い。

中村うさぎは、福岡のミッションスクールで中高とすごし、同志社大学文学部を卒業した、プロテスタントとしての洗礼も受けた作家。言うまでもなく、ブランド買いあさりや成形手術、ホストクラブ勤務など、現代の無頼派作家のような人生を送ってきた人生探求派である。

佐藤優は、同志社大学神学部で修士号を取得したという異色の元外交官。いわゆる「国策捜査」による獄中生活も信仰のチカラで乗り切った筋金入りのプロテスタント。現在は膨大な知の集積をもとに、さまざまな分野で活発な評論活動をつづける作家である。

この二人による対談集、というよりも対話集が意外と議論がかみ合っているのは、二人がほぼ同時期に同志社大学に学んだプロテスタントという共通点があるからだろう。

とはいえ、同じプロテスタントであるといっても、佐藤優のそれはもっとも厳格で容赦のないカルヴィニズム(=カルヴァン主義)、それに対して中村うさぎはバプテスト派であるようだ。

カルヴィニズムは、マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で描いたように、神に選ばれて運命はすでに決まっているという浄土真宗にも似た絶対他力の信仰。こういった知識はアタマでは理解しておいたほうがいいだろう。共感できなくても、いかなる立場から発言しているかがわかる。

内容的には前半の「3-11」以前になされた「春樹とサリンジャーを読む」が面白い。

「3-11」後の対談については、日本人が政府への不信感をつのらせアナーキーになっているといった指摘や、若者たちは『エヴァンゲリオン』にみられるように終末論をなんどもシミュレーションしてきたというデジャヴュ感の指摘も興味深いが、かならずしも賛同しかねる指摘も多々ある。

日本人キリスト教徒の目から「3-11」後の日本を見るとどう写るかに興味のある人は、ざっ目を通してみるのもいいだろう。異なる視点で日本社会を見る一つの物の見方になっているからだ。



<初出情報>

■bk1書評「同志社大学に学んだプロテスタントの二人が語る、キリスト教を軸にしたポスト「3-11」論」投稿掲載(2011年11月7日)


PS 2014年1月に文庫化された。(2014年1月27日 記す)



目 次


プロローグ  佐藤優
第1章 「聖書」を語る
第2章 「春樹とサリンジャー」を読む
第3章‐1 「地震と原発」を読む-チェルノブイリ、そして福島
第3章‐2 「地震と原発」を読む―日本人を繋ぐものは?
エピローグ  中村うさぎ

著者プロフィール


佐藤優(さとう・まさる)


1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了。著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞受賞)、『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

中村うさぎ(なかむら・うさぎ)


1958年福岡県生まれ。作家・エッセイスト。同志社大学文学部英文学科卒。コピーライター、雑誌専属ライターを経て、小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<書評への付記>

いっけん異色の組み合わせに見えるが、じつはそうではないことは書評にも書いたとおりである。

以前から中村うさぎの本に解説を執筆していた佐藤優は、本書でも中村うさぎが内面の衝動に突き動かされて探求してきたテーマは、キリスト教プロテスタンティズムの限界を無意識のうちに試そうという行為であると指摘しているのは興味深い。

本書で佐藤優が指摘しているなかでもっとも興味深いのは、時間には二種類あるという論点だ。

それは、クロノス と カイロス という二種類の時間についてである。

ともにギリシア語で時間をあらわすコトバだが、クロノスは一般につかう時間の意味。時系列で連続している物理的な時間のことである。

一方、カイロスはエピソードによって切断され時間のことである。エピソードとエピソードのなかにつなげられた時間のこと。

日本人の歴史認識も、その意味ではカイロス的であるといえる。「戦前」と「戦後」といった時代区分は、大東亜戦争(≑ 太平洋戦争)というカイロス的時間によって分断されたもの。

その意味では、「3-11」によって、あらたな時代認識が発生したのは当然のことなわけだ。

人間の記憶というものが、そもそも「エピソード記憶」という点を核にして連想ゲーム的に集積されているものである以上、それはきわめてナチュラルな話でもある。



<ブログ内関連記事>

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書評 『「独裁者」との交渉術』(明石 康、木村元彦=インタビュー・解説、集英社新書、2010





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