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2012年5月17日木曜日

「東インド会社とアジアの海賊」(東洋文庫ミュージアム)を見てきた-「東インド会社」と「海賊」は近代経済史のキーワードだ



東洋文庫(東京・駒込)で現在開催中の「東インド会社とアジアの海賊」にいってみた。近くにいく用事があったので、お昼に立ち寄った次第。

「東洋文庫ミュージアム」(東京・本駒込)にいってきた-本好きにはたまらない!というブログ記事で今年の2月に取り上げたが、昨年(2011年)10月に一般公開されたばかりの、あたらしいミュージアムである。

今回の特別展示も、東洋文庫の「資産」をフルに活かした興味深いものになっている。


「東インド会社」と「海賊」は経済史の常識としてもっておきたい話題

東インド会社、そして海賊。まさに二つのキーワードは近代経済史のキーワードである。しかし、けっして過ぎ去った過去の話ではない。

1600年に設立されたイギリス東インド会社と1602年に設立されたオランダ東インド会社。すくなくともこの二つの東インド会社(East India Company)のなんたるかを知らなければ、現在のインドを中心とする南アジアやインドネシアを中心とする東南アジアを理解することは不可能だからだ。

英国の東インド会社もオランダの東インド会社も、その後は閉鎖されて国家による直接的な植民地統治に変化したが、有限責任という株式会社の原点について考える上では、避けて通ることのできない存在であることはビジネスパーソンにとっては常識といってよい。

そして海賊(pirate)。海賊というとソマリア沖だけではないのである。21世紀の現在でも、マラッカ海峡では海賊が横行している。日本の船舶も海賊に乗っ取られたことは、ほんの数年前の話である。カリブ海と相場が決まっているようだが、もちろん東南アジアでも海賊が横行していたことは言うまでもない。

海賊というと、ハリウッド映画の『パイレーツ・オブ・カリビアン(=カリブ海の海賊)』や、日本のベストセラーマンガ『ワンピース』を思い浮かべる人も少なくないだろうが、実態はそんなロマンティックなものではない。

また、海賊版という表現があるように、ネット時代になっても海賊行為は経済世界のなかに存在し続けている。略奪という海賊行為が経済と密接に結びついていることも、アタマに入れておくべき常識だ。

今回の展示のタイトルは、「東インド会社とアジアの海賊」となっている。

東インド会社からみれば、かれらのビジネスにとっての妨害行為と敵対行為を行う者たちこそ海賊であるが、海賊というレッテル貼りをされた立場からみれば、東インド会社こそ海賊であろう。あくまでも相対的な関係でしかないことが、今回の展示に登場する鄭成功(てい・せいこう)の存在からも明らかになる。

鄭成功とは、明(みん)王朝復興のために台湾を根城にして戦った日中混血の英雄である。国姓爺(こくせんや)として、近松門左衛門の人形浄瑠璃の主人公として江戸時代の日本人に親しまれた存在だが、オランダ東インド会社は鄭成功によって台湾から追い出されたのであった。

海賊ということでいえば、オランダよりも英国を強調しなくてはならない。
そもそも英国そのものが海賊の国だったのである!

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か?に、「海賊」というキーワードは、『ネクタイを締めた海賊たち-「元気なイギリスの謎を解く-』(浜矩子、日本経済新聞社、1998)で展開されていることを書いておいた。

英国を中心にするとカリブ海は西インド、インドや東南アジアは東インドとなるが、西インドのカリブ海では、英国そのものが海賊だったことを記憶しておこう。カトリック国であるスペイン船を襲っては略奪の限りを尽くした海賊には、プロテスタント国である英国が国家としてお墨付きを与えていたのだ。

英国は海賊のチカラをフルに活用することによって、近代国家としてのちの大英帝国を建設する基礎を築いたのであった。


東インドでは、東インド会社によって先行するポルトガルを駆逐し、今度は海賊から略奪される側に回ることになる。

そして東インド会社が解散された後は、さきにも触れたように、国家みずからが植民地を略奪する側に回ったのであった。「略奪」という本質は同じである。



展示内容について-「原本」という「実物」にまさるものはない

さて、展示そのものについては、なんといっても『ケンペル日本誌』など、貴重な原本が展示されていることだ。

17世紀末の日本をオランダ東インド会社の長崎駐在医師として着任したドイツ人ケンペルによる『ケンペル日本誌』は、いちばん最初に出版されたのはドイツ語版ではなく英語版なのだが、その英語版がガラスケースのなかに展示されている。

(『ケンペル日本誌』より 14番の立っている人物がケンペル)

展示されているページは、ケンペルが江戸参府におり、御簾越しの五代将軍綱吉の前でドイツ語の歌を歌っている有名なシーンのイラストである。まさに「芸は身を助ける」である。歌いなさいと言われて自作の歌を歌ったらしいが、ケンペルという人は当時でもかなりの知識人であったにかかわらず、人類学者のような「参与観察法」を実践した人であったことがわかるのだ。

また、オランダ東インド会社からみでは、「じゃがたら文」で有名な日本女性「じゃがたらお春」日蘭混血の「おてんばコルネリア」といった、たくましく生きた女性たちも紹介されている。なんと、おてんばという日本語は、馴らしにくいという意味のオランダ語(otembaar)からきたのだという!! 面白い。

イギリス東インド会社関連では、お茶の木を求めて探し回ったプラントハンターのロバート・フォーチュンの原書も展示されている。

お茶なしでは生きていけなくなった英国人は、インドをからませて阿片を中国に売って貿易差損をバランスする三角貿易を構築したが、お茶の木の発見以降は、植民地のインドとセイロン(現在のスリランカ)で栽培を開始した。つまりは、植民地における輸入代替生産によって、中国から輸入する必要がなくなったのである。

(『中国とインドの茶の産地への旅』(1847年)の扉見開き)

世界初の株式会社である英国とオランダの東インド会社が、アジアにおいてはいかなる存在であったかを、実物資料でみるいい機会である。



<関連サイト>

「東インド会社とアジアの海賊」(東洋文庫)


PS 展示会の成果が単行本として出版

企画展「東インド会社とアジアの海賊」の成果が、『東インド会社とアジアの海賊』(東洋文庫編、勉誠出版、2015)として2015年5月に出版されている。企画展を訪れることのできなかった人には朗報だろう。訪問した人にとっても、テーマをより深めるための参考になるだろう。(2015年7月5日 記す)

目 次

口絵
まえがき 斯波義信
序論 アラビア海から東シナ海までの船旅 牧野元紀
総論 東インド会社という海賊とアジアの人々 羽田正
第1部 西南アジア海域
 1.ジョアスミー海賊とは誰か?-幻想と現実の交錯 鈴木英明
第2部 東南アジア海域
 2.貿易と暴力-マレー海域の海賊とオランダ人、1780~1820年 太田淳
 3.ヨーロッパ人の植民地支配と東南アジアの海賊 弘末雅士
第3部 東アジア海域
 4.海商と海賊のあいだ―徽州海商と後期倭寇 中島楽章
 5.中国沿岸の商業と海賊行為―一六二〇~一六四〇年 パオラ・カランカ([翻訳]彌永信美)
 6.屏風に描かれたオランダ東インド会社の活動 深瀬公一郎
 7.『中国海賊(チャイニーズパイレーツ)』イメージの系譜 豊岡康史
 8.清朝に 雇われた イギリス海軍―十九世紀中葉、華南沿海の海賊問題 村上衛
年表
あとがき/平野健一郎
執筆者一覧





<ブログ内関連記事>

「東洋文庫ミュージアム」(東京・本駒込)にいってきた-本好きにはたまらない!


主要な「東インド会社」の本国であった英国とオランダ

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か? ・・海賊の末裔である英国人

「フェルメールからのラブレター展」にいってみた(東京・渋谷 Bunkamuraミュージアム)-17世紀オランダは世界経済の一つの中心となり文字を書くのが流行だった
・・オランダ東インド会社の17世紀はオランダの黄金時代

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求 ・・オランダ東インド会社の17世紀はオランダの黄金時代

政治学者カール・シュミットが書いた 『陸と海と』 は日本の運命を考える上でも必読書だ!
・・海上交通や海上貿易だけでなく、捕鯨や海賊も本格的に取り上げ、英国の「海洋国家」への移行と、それにつづいて登場した米国についてもくわしく語られる


海賊関連

映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた-海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂 聰、新潮社、2009)-「平成の林子平」による警世の書

書評 『海賊党の思想-フリーダウンロードと液体民主主義-』(浜本隆志、白水社、2013)-なぜドイツで海賊党なのか?

(2016年5月18日 情報追加)



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