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2012年5月19日土曜日

レナード・コーエン(Leonard Cohen)の最新アルバム Old Ideas (2012)を聴き、全作品を聴き直しながら『レナード・コーエン伝』を読む


滅多にCDを買うことのなくなったわたしだが、絶対に買うCDはある。好きなアーチストの最新CDである。

ただし、高価な日本版を買うことはない。今回は、amazon で最安値になっていた英国からのインポート版を購入した。

そもそものは詩人として出発したレナード・コーエンのCDには、かならず歌詞カードがついており、この英国版もその点はまったく心配ない。

今回の最新アルバムは8年りのもの。レナード・コーエン自身、1934年生まれだから今年で78歳を迎えることになる。しかし、生涯現役を貫いているといえるのだろう。今回のあたらしいアルバムも8年ぶりだ。

最新アルバムのタイトルは Old Ideas(オールド・アイディア)。New Ideas(ニュー・アイディア)ばかりが強調されるのがいまの世の中だが、33 1/3回転のレコードのような、抑揚のない催眠術師のような歌い方といわれてきたレナード・コーエンだ。若い時から深みのある声だったが、年を取ってさらに声は深く渋くなっている。

わたしがレナード・コーエンを聴き始めたのは1980年代の後半からなので、すでに四半世紀近い。
1980年代から1990年代のかけてのアルバムだけでなく、その後アメリカやヨーロッパで入手したCDで、歌詞を覚えてしまうくらい聴き込んできた。

The Essential Leonard Cohen についている小冊子から、過去に発表されたディスコグラフィーをカバー写真で掲載しておこう。完璧主義者のレナード・コーエンの作品は、シンガーソングライターとしてのキャリアが45年以上あるが数は少ない



レナード・コーエンは、一貫してヨーロッパでの人気が高い。カナダのモントリオール生まれの彼は、もともと詩人と作家として出発した人だ。最初からシンガーソングライターだったわけではない。

かつては「死火山のように、忘れた頃にいきなりインパクトのあるアルバムを送り出す、なんて評があったくらいだ。一つの曲つくりのため歌詞を納得のいくまで手直しする彼は、レコーディングしても結局リリースしないでお蔵入りというケースも多いようだ。


『レナード・コーエン伝』(Various Positions)を読む

きょうは朝から、レナード・コーエンのCDをつぎからつぎへとかけっぱなしにしながら、『レナード・コーエン伝』(イラ・ブルース・ナデル、大橋悦子訳、夏目書房、2005)を読み切った。古本で入週してから4年たっている。

原著タイトルは、Ira B. Nadel, Various Positions: A Life of Leonard Cohen, 1996 というもの。Varuous Position(さまざまなポジション) とは、わたしがもっとも好きなアルバムのタイトルだが、日本語版は『哀しみのダンス』となっている。Dance Me to the End of Love (1984)という曲をそのままアルバム名としたものだ。



英語版はコンスタントに売れ続けているようだが、日本語版は重版されていないので新刊書では入手できない。日本語版は再版はないかもしれない。かなりヘビーなファンでないと、読んでもあまり興味がわかないだろう。

すでに25年以上もレナード・コーエンを聴き込んできながら伝記的な情報にはあまり関心を向けてこなかったわたしには、レナード・コーエンの全人生と全作品に対するコメンタリー(注釈)のように思われる内容豊富な本だった。

カナダのモントリオールに、多数派のフランス語人ではなく、英語人のしかもユダヤ系のアッパーミドルクラスの商人の家に生まれたレナード・コーエン。彼の人生は根本にユダヤ教がある。9歳のときに父親を亡くすという喪失感が出発点にある精神的トラウマ。

しかも長年にわたって日本人の老師について禅仏教の修行に専念してきたレナード・コーエン。ユダヤ教と禅仏教が彼の人格の根底と作品に大きく反映していることが、カナダ人の英文学者で伝記作家の本書によって、詳細に跡づけられるている。

正式に禅僧となり、長年にわたって師事してきた臨済宗の老師である佐々木承周師からもらった法名が自間(Jikan)。

禅仏教の修行を深めることによって、自らのアイデンティティであるユダヤ教についても深めることができたというレナード・コーエンは、ユダヤ教に欠けるものが、祈りと瞑想の重視であるという。

ラビ的なユダヤ教ではなく、預言者のユダヤ教に惹かれてきた彼は、子どもの頃に受けた『イザヤ書』の影響が強いのだそうだ。母方の祖父がラビであったというコーエンだが、コーエンという名字はそもそもヘブライ語で祭司を意味するものだ。

レナード・コーエンが求めててやまなかったスピリチュアリティとは、形式主義ではなく、生きた信仰ということだろうか。それは東欧のハシディズムにも通じるものがある。

禅仏教によって実践してきた自分を徹底的に深掘りする行為が、人生にも作品にも反映している。伝記の英語原書のタイトルでもある Varuous Position(さまざまなポジション)は、アルバムタイトルから取られたものだが、「一所不住」(いっしょふじゅう)という禅の教えを英語にしたものなのだ。

こういう観点から読んでみるのも面白いかもしれない。なぜユダヤ人に禅仏教やチベット仏教に帰依する者が多いのか、その一人のケーススタディとして読んでみるのも面白いかもしれない。

なお、レナード・コーエンには、NHKがフランスとカナダと共同製作して放送した『NHKスペシャル チベット死者の書』の英語版 The Tibetan Book of the Dead で朗読を担当している。抑揚のない低くてゆっくりした声は、お経のように聞こえるかもしれないので、内容にはまさにピッタリである。ちなみに日本版の脚本を書いたのは中沢新一だが、英語版では一部修正しているようだ。

『チベット死者の書』そのものの朗読はハリウッド俳優のリチャード・ギアも行っているが、機会があれば、ぜひ音声を聴くき比べて欲しい。

こういうことを、400ページ近い伝記を読んでディテールについて確認しながら、てふたたびCDを聴いてみる。そんな一日を過ごすのもたまには悪くない。

PS レナード・コーエン死す(2016年11月7日)

享年82歳。禅の修行では来日しても、結局コンサートで来日することがなかったのが残念。ことし2016年のノーベル文学賞が同じくユダヤ系のボブ・ディランが受賞することになったが、レナード・コーエンこそふさわしかったのではないかと思うのは私だけではあるまい。もはやあたらしいアルバムが出ることはないが、これからも折に触れて聴いていきたいと思う。ご冥福をお祈りします。合掌。 (2016年11月15日 記す)

(追悼記事)
レナード・コーエンのいま振り返るべき軌跡-どこにも属さない孤高の存在感放ち続けた男の世界に酔いしれる (MIKIKI、2017年2月27日)

ディランと双璧をなす「歌う大詩人」レナード・コーエンの名作人間の本質、矛盾、多面性を見つめ歌い上げたアーティスト (WEDGE、2017年3月31日)


(2017年3月31日 情報追加)



<関連サイト>

Leonard Cohen Facebookページ (公式サイトのようなもの)

佐々木承周老師のこと
・・レナード・コーエンの禅仏教の師匠は、臨済宗の佐々木承周老師。この人については、日本ではまったく知られていないようだが、この記事を参照

Tibetan book of the dead Part 1
Tibetan book of the dead Part 2 
Tibetan book of the dead Part 3
Tibetan book of the dead Part 4
Tibetan book of the dead Part 5
Tibetan book of the dead Part 6
Tibetan book of the dead Part 7
(YouTube 『チベット死者の書』の朗読はレナード・コーエン)

Tibetan Book of the Dead (intro) (リチャード・ギアによる『チベット死者の書』朗読)


シンガーソングライター レナード・コーエンさん 写真特集 (時事通信)


(2017年7月3日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

グラフィック・ノベル 『スティーブ・ジョブズの座禅』 (The Zen of Steve Jobs) が電子書籍として発売予定
・・レナード・コーエンとは別の日本人老師に師事して禅仏教の修行を行ってきたジョブズ

書評 『大使が書いた 日本人とユダヤ人』(エリ・コーヘン、青木偉作訳、中経出版、2006)
・・「先祖は、コーヘン(祭司:Cohen)の家系であり、エルサレムの第二神殿破壊以後、チュニジアのジェルバ島で2500年以上過ごす。イスラエル建国後、父親の代にコーヘン・ファミリーはイスラエルに帰還した」。

『ユダヤ教の本質』(レオ・ベック、南満州鉄道株式会社調査部特別調査班、大連、1943)-25年前に卒論を書いた際に発見した本から・・・

本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)

書評 『ユダヤ人エグゼクティブ「魂の朝礼」-たった5分で生き方が変わる!-』(アラン・ルーリー、峯村利哉訳、徳間書店、2010)

書評 『目覚める宗教-アメリカが出合った仏教 現代化する仏教の今』(ケネス・タナカ、サンガ新書、2012)-「個人のスピリチュアリティ志向」のなかで仏教が普及するアメリカに読みとるべきもの

グラフィック・ノベル 『スティーブ・ジョブズの座禅』 (The Zen of Steve Jobs) が電子書籍として発売予定
・・ジョブズもまた禅仏教に傾倒していた

NHK連続ドラマ小説 『花子とアン』 のモデル村岡花子もまた「英語で身を立てた女性」のロールモデル
・・カナダ・メソジスト教会が設立した東洋英和で英語を身につけた村岡花子。

(2014年9月1日 情報追加)


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