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2012年6月15日金曜日

書評 『ポロ-その歴史と精神-』(森 美香、朝日新聞社、1997)-エピソード満載で、埋もれさせてしまうには惜しい本


「ポロ」(Polo)というと、多くの人は、英国のチャールズ皇太子がプレイしている姿を想起するのではないだろうか。わたしもそうだ。だから、この本を読むまで、てっきりポロは英国で生まれた貴族のスポーツだと思い込んでいた

ところが、ポロというスポーツは英国生まれではないインド(あるいはチベット)で生まれた「伝統スポーツ」なのだった。馬にのって球を道具で打つポロは、人馬一体となる狩猟民族の戦闘模擬訓練でもあったのだ。疑似戦争としてポロの試合が行われたわけである。

インドで生まれたポロは、西に広がってポロとなり、東にも広まって中国大陸から朝鮮半島を経て日本にも伝わる。日本でもポロは、打毬(だきゅう)という形で宮内庁によって伝承されているのである!宮内庁が伝承しているのは雅楽だけではないのだ。

こんな知られざるエピソードが満載の 『ポロ-その歴史と精神-』(森 美香、朝日新聞社、1997)は、いまから15年に出版された本だ。当時、スポーツ関連の仕事にかかわっていたわたしはすぐに買い求めたが、読まないまま15年もたってしまった。今回、ようやく機会をみつけて読んでみた。

日本に伝わった打毬(だきゅう)について補足しておこう。平安時代にさかんになったが、武士の時代には流鏑馬など、より実戦に近いものが好まれた結果、廃れてしまったらしい。だいぶ後の世になるが、将軍吉宗の時代に復活し、現在は宮内庁で伝承されているとのことだ。天皇陛下も若い頃はポロをなされたらしい。

さて、西に拡がったポロだが、英国が深くかかわっていたことは確かなのである。

英国は19世紀になってインドを植民地にしたのだが、英国人とは切っても切れない関係となったお茶をなんとか中国から輸入せずにすませたいと思っていたお茶の原木がインド高地のアッサムで発見された。アッサム・ティーの原産地である。

その同じアッサムのポニー馬をつかって行われたインドの「伝統スポーツ」が、インド駐留の英国陸軍将校のあいだでさかんに行われるようになり、競技スポーツとして近代化されたのが現在のポロなのである、と。

紅茶とポロというスポーツには接点があったわけだ。

英国で「近代スポーツ化」されたポロだが、まずはインド駐留の英国陸軍将校のあいだで拡がったのは、英国と比べてインドのほうがコストが低かったというのも大きな理由であるらしい。

その後、英国本土でもポロクラブの開設ラッシュがつづき、貴族と上流階級の社交場として機能するようになった。ブレア政権時代に禁止となったが、おなじく馬をつかうスポーツである、貴族の趣味であるキツネ狩りとポロは、シーズンが異なるので、貴族のあいだではたいへん好まれたそうだ。

そして世界に普及したのは、陸軍ではなく海軍のおかげであるらしい。海軍の寄港地で、積極的にポロを普及させたらしい。チャールズ皇太子の人生の指南役であった叔父のマウントバッテン伯爵も海軍士官であった。

マウントバッテンは英国の最後のインド総督をつとめた人であるが、インドのマハラジャ(藩王)たちとは積極的にポロをつうじて交友関係をつくっていたおかげで、インド独立に際してマハラジャたちの説得をスムーズに行うことができたのだという。その後の英国とインドとの関係は、クリケットだけでなくポロもあずかって大きかったわけなのだ。

この他、本書には、1920年代アメリカの『グレート・ギャツビー』や、ポロシャツトラルフローレン、アルゼンチンの国技となったポロなど、ポロの愛好家ではなくても面白い話題が満載である。

冒頭にも書いたように、ポロというとチャールズ皇太子を思い浮かべるのは、戦後になってから、うまくイメージを作り上げることができたということだろう。その意味では、ポロは著者が書いているように「英国王室のショーウィンドー」であるだけでなく「貴族の最後の砦」でもあるのだろう。

現在でも、英連邦においては、オーストラリアでも、マレーシアでも、シンガポールでもポロは行われている。1997年に中国に返還された香港では、本書が出版された時点(1997年ではすでになくなっっていたらしい。ちょっと残念な気がしなくもない。

いまから15年前に出版された本だが、類書がまったくない好著なので、そのまま忘れ去られてしまうのはじつに惜しい本である。ますは、古本でいいのでぜひ一読してほしいと思う次第だ。



目 次  
第1章 ポロの誕生
第2章 血塗られた中国の撃毬
第3章 日本で花開いた打毬
第4章 大英帝国の歩みとともに
第5章 アメリカで結実した貴族のスポーツ
第6章 ポロの心
第7章 現状と展望
あとがき
参考文献

著者プロフィール
   
森 美香(もり・みか)
1957年、東京都生まれ。1981年、慶應義塾大学文学部(西洋史専攻)卒業。その後、スタンフォード、ジュネーブ両大学留学。1985年より米英でポロの取材を始め、新聞、雑誌等に執筆。現在、米国の Museum of Polo and Hall of Fame の国際委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


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(2014年12月29日 記す)



<関連サイト>

国際ポロ連盟(Federation of International Polo) 公式サイト 

宮内庁 打毬(だきゅう)・・皇室に伝わる文化。将軍吉宗が復活させたもの


(ロイヤル香港ポロ・クラブ 『続エマニュエル夫人』(1977年)のシーンから)


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(2014年5月11日、2017年11月26日 情報追加)



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