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2012年12月28日金曜日

書評『マネー資本主義 ー 暴走から崩壊への真相』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)ー 金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版


金融危機からまだあまり時間がたっていない2009年にNHKスペシャルとして4回にわたって放送された『マネー資本主義』の書籍化の文庫化である。番組を見てからすでに4年たつわけだが、読んでみて思うのは番組内容をあまり覚えていなかったということだ。

あらためて思うのは、番組の構成がじつによくできていることだ。金融危機にかかわったプレイヤーたちをカテゴリー別に4つに分類し、4つの位相からみている点である。この4つの視点が複眼的なものの見方を実現させているといっていい。その4つの位相とは以下のとおりだ。

① 投資銀行
② アメリカの金融財政政策
③ 年金基金などの機関投資家、ヘッジファンド
④ 金融商品をつくりだした金融工学者

①では、名門投資銀行のソロモンブラザーズで開発されたモーゲージ債がすべての出発点であったことが確認される。そして自己勘定取引の採用による投資銀行の基本からの逸脱株式会社による資金調達を利用したレバレッジなど、ソロモンではじまった投資銀行の「革命」から30年後に金融危機として破綻にいたったことが語られる。

②では、連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長の市場原理主義の思想的根源が小説家アイン・ランドにあったこと、ロバート・ルービン財務長官の「強いドル政策」によりアメリカの主要産業が製造業から金融へシフトしたこと、マネーの動きが大きく変わった1995年の背後には、つねにデフレ経済下の日本からの圧力があったこと、総称して「ミセス・ワタナベ」といわれていた日本人個人投資家たちのFX投資など、低金利の日本からあふれでたマネーが制御を失い、アメリカの金融政策の有効性を大きく減じたこと。

③では、高い利回りを求め続ける年金基金がヘッジファンドをさらにリスクの高い投資へと追い込んでいったことが明らかになる。ITバブル崩壊による損失をカバーするための需要が供給をつくりだすという関係だ。まさに「バブルのリレー」という綱渡りが繰り返されてきたのである。だが、かつてドラッカーが「年金社会主義」とネーミングした経済は金融危機後も変わることなく続いている

④では、アインシュタインによるブラウン運動(=ランダムな動きの確率論的把握)の理論化が引き起こした2つの「大爆発」は一つは原子爆弾という大量破壊兵器として、もうひとつは金融危機として人類に災厄をもたらしたこと。債券としてのCDO(債務担保証券)、保険商品としうてのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の開発にかんしては、金融危機という大爆発を招いたものの、金融テクノロジー自体は価値中立的であることが示される。問題はつかう側にあるということだ。

本書では格付け会社の金融危機において果たしたネガティブな役割についてはあまり触れられていないが、金融商品を販売する側の投資銀行における需要が高い格付けという供給をつくりだすという関係であったことも指摘されている。

世界的に低金利によるカネあまり状況が続いている。問題の根本的解決がなされることなく、先送りされているのだ。2009年のリーマンショックはすでに過ぎ去った歴史ではない。いまだに続いている問題であり、なぜ金融危機が発生したかは理解しておく必要がある。

映像とは違って活字だと内容を考えながら読めるので、番組を見た人もあらためて読んでみるといいと思う。映像番組の取材と編集にかかるコストを考えれば、文庫本で520円(+消費税)という価格はじつにお得である。

金融危機後の2009年に出版された本書は、2012年のいまから読んでもひじょうに示唆にとむ内容である。文庫本あとがきに書かれているが、金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」のなかでおこなわれた関係者の貴重な証言はきわめて価値がある。

ぜひ読むことをすすめたいドキュメントである。




目 次

まえがき
第1章 投資銀行-暴走はなぜ止められなかったのか
第2章 超金余り-カリスマ指導者たちの誤算
第3章 年金マネー-「安全第一」からヘッジファンドと手を組むまで
第4章 金融工学-ウォール街の“モンスター”
あとがき
インタビュー


<関連サイト>

NHKスペシャル 『マネー資本主義』(番組の公式サイト)

第1回 “暴走”はなぜ止められなかったのか~アメリカ投資銀行の興亡~
2009年4月19日(日)午後9時00分~ 総合
第2回 “超金余り”はなぜ起きたのか? ~カリスマ指導者たちの誤算~
2009年5月17日(日)午後9時00分~ 総合
第3回 年金マネーの“熱狂”はなぜ起きたのか
2009年6月14日(日)午後9時00分~ 総合
第4回 ウォール街の“モンスター” 金融工学はなぜ暴走したのか
2009年7月19日(日)午後9時00分~ 総合
最終回 危機を繰り返さないために
2009年7月20日(月)午後7時30分~ 総合
ウォール街の“モンスター” バブルは再び起きるのか
2009年12月20日(日)午後9時45分~ 総合


<ブログ内関連記事>

書評 『世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)-アメリカ金融業界の周辺部からリーマンショックに迫る人間ドラマ

CAPITALISM: A LOVE STORY ・・映画 『キャピタリズム マネーは踊る』

マイケル・ムーアの最新作 『キャピタリズム』をみて、資本主義に対するカトリック教会の態度について考える

映画 『ウォール・ストリート』(Wall Street : Money Never Sleeps) を見て、23年ぶりの続編に思うこと

『資本主義崩壊の首謀者たち』(広瀬 隆、集英社新書、2009)という本の活用法について

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む


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