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2014年9月11日木曜日

書評 『新・学問のススメ-生涯学習のこれから-』(石 弘光、講談社現代新書、2012)-「公開大学」の先駆者としての「放送大学」について知っておくことは重要だ


ネット上の無料公開授業が話題になることが多いが、大学のこれからを考えるうえで、遠隔学習の先駆者である「放送大学」を考慮に入れなくてならないはずだ。だが、なぜか一緒に言及されることがないことを不思議に思う。

こんなことを思うのは、『新・学問のススメ-生涯学習のこれから-』(石 弘光、講談社現代新書、2012)という本を読んだからだ。放送大学の前学長が書いた本である。

「改革派」の学長が、在任期間の4年間のあいだの経験をベースに「生涯学習」のあり方について書いたもの。学習者の「満足」をいかに高めるかという観点から、監督官庁との「抵抗」と戦かってきたかを記した手記のような内容でもある。

放送大学の管轄官庁は、大学にかんしては文部科学省、放送にかんしては総務省と二省ににまたがるのがややこしい。医科学大学や歯科大学が文部科学省と厚生労働省にかかわるのと似た状態である。最終的に予算をつけるのは財務省である。

著者の石弘光氏は財政学者、税調会長も歴任された税金についての専門家である。その意味では財務省寄りではあるが、この本を読んでひさびさに「石先生らしいいなあ」と思ったのは、直接存じ上げているからでもある。江戸っ子らしい歯切れのいい発言が石先生らしい。

放送大学のガバナンスのあり方についての本でもあるわけだが、その意味ではタイトルと中身がかならずしも一致しないような気がしなくもない。

だがもちろん、放送大学そのものについても、英国・米国と韓国を中心に諸外国の事例との比較が詳しく書かれているので、生涯学習のための「公開大学」(=オープン・ユニバーシティー)のあり方について、興味深いものがある。

英国のゆきとどいた公開大学は、地域コミュニティとのかかわりなども含めて世界のモデルであり、米国のメリーランド大学の公開大学は海外に駐留する軍人とその家族の受講生が多い。韓国はサイバー先進国として、授業コンテンツの携帯への配信(・・さらにいえばスマホへの配信も?)が行われている、など。

すでに MIT(=マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学などが、授業のコンテンツを映像として無料でインターネット上で不特定多数の視聴者に向けて配信している。これは MOOC(=Massive Open Online Course)と呼ばれる形態である。この動きのなかでは、放送大学や通信教育のあり方も変わって当然なのだが、官僚がからむと改革がむずかしいのは放送大学に限ったことではなさそうだ。

日本でも、「無料オンライン大学」の gacco(がっこ)が 2014年4月からスタートしたそうだ。正式には gacco The Japan MOOC | 無料オンライン大学講座 という。現役のビジネスパーソンは「キャリアアップ」、高齢者は「趣味と教養」、高校生は「大学の選択」が視聴目的となるよう設定しているらしい。生涯学習というコンセプトは共通するものの、既存の「放送大学」とはなにがどう違うのか把握しておきたいものだ。

このように、すでに高学歴社会となっている先進国においては「学び」のニーズの違いがあるのだが、発展途上国でも国民全体に教育を普及させる手段として「公開大学」としての「放送大学」への取り組みに重点がおかれているらしい。

「学習すれば次の段階に進もうとする成長が始まる。教育とは終わりなき道のりである」という、タイ王国のプミポン国王のコトバが引用されている(P.203)。国民国家形成途上における指導者の姿勢が鮮明に表現されているというべきだろう。

実際問題、放送大学も含めた通信教育は、学習者の側の強い意志が求められるので継続するのはなかなかむずかしい。これはわたし自身の経験でもある。

もちろん、単位を取得するために視聴するだけでなく、知的好奇心を満足させるために視聴するのもありだろう。なんといっても授業内容というコンテンツそのものに魅力があるかどうかがカギである。

放送大学は、オンディマンド性とインタラクティブ性がやや弱いと見られているが、現在ではテレビとラジオだけでなくインターネット対応も進めている。

時空にとらわれずに「学ぶ」ことができる「通信教育としての公開無料大学」。その先駆者としての「放送大学」について理解をしておくことは、教育の今後を考えるうえで不可欠でないかと思うのだがいかがだろうか。





目次

プロローグ
第1章 高まる生涯学習のニーズ-その基本的性格と課題
 1. 生涯学習の歩み
 2.  生涯学習と遠隔教育
 3. 新・学問のススメの背景
 別掲 生涯学習の実現に向けて「新・学問のススメ」(鈴木寛文 文部科学大臣との対談)
第2章 生涯学習と学びの場-放送大学に赴任して
 1. 放送大学の創設とその背景
 2. 学びの場に登場して
 3.  初仕事
第3章 遠隔教育手段による生涯学習の実態-現場からの報告
 1. 遠隔教育の下での学び方
 2. 面接授業(スクーリング)
 3. 現場からの学生の声
 4. 国際化の戦略
第4章、遠隔教育の主な戦い-世界ののの現状オープン大学
 1.  遠隔教育のの世界の動向
 2. 遠隔教育の国際組織とその活動
 3. イギリスの公開大学
 4. アメリカの公開大学
 5.  韓国の公開大学
第5章 地域の生涯学習コミュニティの形成-学習センターの役割
 1. 生涯学習と地域コミュニティー
 2. 遠隔教育の地域的広がり
 3. 世界公開大学シンポジウムの成果
 4. 中国公開大学の地域ネットワーク
第6章 改革と挫折 - 学長の挑戦-
 1. 教員人事のあり方
 2. 教員サービスの改善
 3. 大学管理上の仕組み
 4. 大学管理組織のあり方
エピローグ


著者プロフィール

石 弘光(いし・ひろみつ)
1937年、東京生まれ。一橋大学経済学部卒業。その後、同大学教授を経て、学長(1998~2004年)。中央大学特任教授を経て、2007~11年、放送大学の学長を務めた。現在、一橋大学ならびに中国人民大学名誉教授。ほかに、国立大学協会副会長、中央教育審議会臨時委員、政府税制調査会会長、財政制度等審議会委員などを歴任。専門は財政学、経済学博士。財政、税制に関する著書多数。それ以外の著書に、『大学はどこへ行く』(講談社現代新書)、『癌を追って』(中公新書ラクレ)など。





<関連サイト>

コミュニケーションの大学のオープン大学 
・・「放送大学は、テレビやラジオ、インターネットを通じて好きな時間に学習できる通信制大学です。放送大学では、通信学習できるため、地域を問わず、さまざまな年代、職業の方が学んでいます」(説明)

玉川大学「通信教育」
・・「教育の玉川」は通信教育の分野でも長い歴史と実績

TED Talks Ideas Worth Spreading (英語)
・・さまざまな専門家や一般市民が聴衆の前で披露するプレゼンテーション。ここにあるのは、いわゆる「実践知」から「教養」までじつに幅広い。これもまたネット上に無料で公開されている授業の一形態と捉えることも可能だろう



<ブログ内関連記事>

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

書評 『新・学問のすすめ-人と人間の学びかた-』(阿部謹也・日高敏隆、青土社、2014)-自分自身の問題関心から出発した「学び」は「文理融合」になる ・・阿部謹也氏は一橋大学学長を歴任。その後任が石弘光氏である

書評 『独学の精神』(前田英樹、ちくま新書、2009)-「日本人」として生まれた者が「人」として生きるとはどういうことか
・・通信教育もまた質疑応答やスクリーング以外は「独学」としての要素が強い


大学との過去と未来

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?


「NHK白熱教室」という「無料公開大学」

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ

コロンビア大学ビジネススクールの心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました

「バークレー白熱教室」が面白い!-UCバークレーの物理学者による高校生にもわかるリベラルアーツ教育としてのエネルギー問題入門

「オックスフォード白熱教室」 (NHK・Eテレ)が面白い!-楽しみながら公開講座で数学を学んでみよう

慶応大学ビジネススクール 高木晴夫教授の「白熱教室」(NHK・ETV)


営利企業によるインターネット大学

書評 『進化する教育-あなたの脳力は進化する!-(大前研一通信特別保存版 PART VI』(大前研一、ビジネス・ブレークスルー出版事務局=編集、2012)-実社会との距離感が埋まらない教育界には危機感をもってほしい ・・営利企業によるインターネット大学・ビジネスブレークスルー大学


ネット上の無料公開授業

書評 『世界はひとつの教室-「学び」×「テクノロジー」が起こすイノベーション-』(サルマン・カーン、三木俊哉訳、ダイヤモンド社、2013)-「理系」著者によるユーザーフレンドリーな学習論と実践の記録




(2012年7月3日発売の拙著です)










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終わり