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2014年12月21日日曜日

新旧2つの『渋沢百訓』を読む ー 渋沢栄一の『渋沢百訓』(1912年)と100年後の5代目子孫による『渋沢栄一 100の訓言』(2010年)


 『渋沢百訓』という本がある。日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一が、後進の経営者を中心とした次世代の経済人に向けて「100の訓言」をまとめた修養本である。現代風にいえば自己啓発書である。

 『渋沢百訓-論語・人生・経営-』(渋沢栄一、角川ソフィア文庫、2010)として文庫化されたこの本は、もともと1912年(明治45年)に出版された『青淵百話』から57話を選んで再編集したものだ。青淵(せいえん)とは渋沢栄一の雅号である。

『渋沢栄一 100の訓言』 (渋澤健、日経ビジネス人文庫、2010)という本がある。渋沢栄一の孫の孫の投資アドバイザーが書いた本だ。『論語と算盤』や『青淵百話』をはじめとした渋沢栄一の講演や訓話などから100の訓言を選んで現代人のために解説した本だ。『青淵百話』の出版から、じつに100年後(!)に書かれたものだ。


渋沢栄一の基本的思想は、『論語と算盤』で展開された「義利一致」というフレーズに集約される。

儒教の徳目である「義」と商売人にとって重要な「利」の一致である。「義」(=理想主義)と商売人にとって重要な「利」(=現実主義)の一致させることを説いたものだ。道徳なき商業における拝金主義を否定し、利益追求を蔑視した道徳をともに否定するのは、実業界で財界リーダーであった渋沢栄一ならではの教えといえるだろう。

 『渋沢百訓』(・・原題は『青淵百訓』)は、『論語と算盤』と重なる話も多いが、主義、覚悟、立志、修養、処世について、人生観と社会観、さらには国家観を踏まえた自分の思想を、さらに具体的な体験談やエピソードをまじえたものになっている。

経営者向けの会社経営にかんする具体的指南から、次世代を担う若者への人生論的アドバイスまで、惜しみなく自分の考えを語り尽くしたものである。労使対立など、当時のアクチュアルな問題にも踏み込んでいるのは、つねに現実に対処しなくてはならない企業経営者ならではのものである。

戦後では松下幸之助翁、現在では稲盛和夫氏など経営者が事業経営のワクを越えて語ったものは多いが、渋沢栄一の『渋沢百訓』はそのはしりといってよいものだろう。いずれも日本人経営者による、日本人向けの訓話だが、日本人のワクを越えた普遍的な内容をもっている。

『渋沢栄一 100の訓言』 (渋澤健、日経ビジネス人文庫、2010)は、そんな渋沢栄一の訓言を100項目抽出して、解説を加えたものだ。ブログ記事を編集して一冊にしたこの本は、さらっと読めてしまうが、渋沢栄一自身の訓言とその解説を読んでいると、現代においてもまったく色あせないものがあるばかりか、おおいに反省をしなくてはならないことに気がつかされるはずだ。

一つだけ引用しておこう。ギクリとする内容ではないだろうか。

63 株主に委託された会社を自分のもののように扱うのは悪徳経営者である
現代における事業界の傾向を見るに、まま悪徳重役なる者が出でて、多数株主より委託された資金を、あたかも自己専有のもののごとく心得・・・・【『論語と算盤』 算盤と権利】

渋沢栄一の訓言が100年の時空を越えても説得力があるのは、借り物の思想ではなく、みずからが体験して会得したものを、みずからのコトバで語っているからである。

『論語と算盤』とあわせて新旧二つの『渋沢百訓』も読んでみる価値はあるはずだ。




●『渋沢百訓-論語・人生・経営-』(渋沢栄一、角川ソフィア文庫、2010)

目 次 
主義
 天命論
 人生観
 国家
 社会
 道理
 余が処世主義
 公生涯と私生涯
 天の使命
 清濁併せ呑まざるの弁
 論語と算盤
 論語主義と権利思想
覚悟
 米櫃演説
 商業の真意義
 日本の商業道徳
 武士道と実業
 新時代の実業家に望む
 事業経営に対する理想
 企業家の心得
 成功論
 成敗を意とする勿れ
 事業家と国家的観念
 富貴栄達と道徳
 危険思想の発生と実業家の覚悟
 当来の労働問題
 社会に対する富豪の義務
立志
 就職難善後策
 地方繁栄策
 立志の工夫
 功名心
 現代学生気質
 頽廃せし師弟の情誼
 初めて世に立つ青年の心得
 役に立つ青年
 余が好む青年の性格
 会社銀行員の必要的資格
 衣食住
修養
 貯蓄と貯蓄機関
 交際の心得
 人格の修養
 精神修養と陽明学
 常識の修養法
 習慣性について
 大事と小事
 意志の鍛錬
 克己心養成法
 元気振興の急務
 勇気の養い方
 健康維持策
処世
 服従と反抗
 独立自営
 悲観と楽観
 逆境処世法
 傭者被傭者の心得
 過失の責め方
 激務処理法
 貧乏暇無しの説
 読書法
解説 井上潤


著者プロフィール

渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)
1840年、深谷市生まれ。幕臣。維新後、1869年明治新政府に仕官。民部省、大蔵省に属した。辞任後は、第一国立銀行をはじめ500社前後の企業の創立・発展に貢献した。また商工業の発展に尽力、経済団体を組織し商業学校を創設するなど実業界の社会的向上に努めた。(amazonより)

 



●『渋沢栄一 100の訓言』 (渋澤健、日経ビジネス人文庫、2010)

目 次

まえがき
はじめに なぜ、いま、渋沢栄一なのか
第1章 心にも富を貯えるための教え
第2章 行いを研ぎすますための教え
第3章 規律を学ぶための教え
第4章 運のつかみ方を知るための教え
第5章 教育の理想を説いた教え
第6章 家族と幸せになるための教え
第7章 人と人の関係を楽しくする教え
第8章 会社の本質を見抜く教え
第9章 社会を元気にする教え
第10章 世界とともに生きるための教え
第11章 お金儲けの哲学が光る教え
おわりに 未来に生きる渋沢栄一の「黄金の知恵」
参考資料について


著者プロフィール

渋澤健(しぶさわ・けん)
コモンズ投信会長。1961年、渋沢栄一の玄孫として生まれる。1983年テキサス大学化学工学部卒。1987年UCLA大学でMBA取得。米系投資銀行で外債や為替などの運用に携わった後、1996年に米大手ヘッジファンドに入社。2001年に独立し、シブサワ・アンド・カンパニー設立。2008年コモンズ投信を立ち上げ、会長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



PS この投稿でこのブログの1,500本目の記事となる。一つの節目だが、まだまだ書き続けますよ!(2014年12月22日 記す)


PS2 渋澤健氏による『渋沢栄一 百の訓言』の続編『渋沢栄一 百の金言』が出版された。’2016年1月15日 記す)



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日印交流事業:公開シンポジウム(1)「アジア・ルネサンス-渋沢栄一、J.N. タタ、岡倉天心、タゴールに学ぶ」 に参加してきた

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・・「士魂商才」は渋沢栄一の思想

(2014年12月23日 情報追加)


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