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2015年12月30日水曜日

書評『講義ライブ だから仏教は面白い!』(魚川祐司、講談社+α文庫、2015)ー これが「仏教のデフォルト」だ!


この本は面白い。ほんとうに面白い。

帯に記された「ニートになれ。世界を終わらせろ。」というコピーに違和感を感じたなら読むべきだ。読めば一般読者の「仏教」観は完全にくつがえされるだろう。いや、へたに「仏教」について予備知識がなければ、逆にすんなり理解できるかもしれない。

『講義ライブ だから仏教は面白い』(魚川祐司、講談社+α文庫、2015)は、もともと電子書籍版として出版されたものを、加筆修正のうえ文庫本として書籍化したものだ。

著者は1979年生まれの「仏教研究者」。ミャンマーのヤンゴンで瞑想修行の実践を行いながら仏教教理の研究をすすめている。著者が「仏教徒」と名乗らないのは、特定の宗派の立場からする説法ではないからだ。

著者は、聞き手との対話の形式をつかいながら「初期仏教」、すなわちブッダ(=仏陀)が言っていることを仏教経典に即して解説している。聞き手の合いの手がちょっと過剰ではないかという気がしないでもないが、ライブという臨場感が伝わってくるのがよい。

この本で解説されていることは、いわば「仏教」のデフォルト、つまり「初期設定」なのである。その後の「仏教」の展開は二次創作的なバリエーションだから、この初期設定についてただしく理解しておくことが大前提になるのだ。

ミャンマーは、スリランカとならんでテーラヴァーダ仏教(=上座仏教)の中心地。テーラヴァーダ仏教は、「初期仏教」の特徴を現代までよく伝えているといわれる。

そのほかタイやラオス、カンボジアという「上座仏教圏」においては、「上座仏教」は、出家者ではなくても、一般民衆の思考に多大な影響を及ぼしている。
  
さらに、いまグーグルなどアメリカのIT系大企業で社員教育の一環として本格的に導入されている「マインドフルネス研修」は、「テーラヴァーダ仏教」のウィパッサナー瞑想法を応用したものだ。マインドフルネス(mindfulness)とは「気づき」の状態に満ちていることである。

日本の「大乗仏教」に慣れている人には、本書の内容はとんでもなく奇異な印象さえ受けるだろう。現代日本人の「常識」とは相容れないからだ。だが、「初期仏教」についての理解がないと、根本的な認識を誤ることにもなりかねないはずだ。

まさに「仏教はヤバい!」のである。最近の若者風にいえば、「ヤバい!」は「スゴい!」という意味になる。ヤバいほどスゴいということだ。その意味は、本書を読んでいけば実感できるはずだ。

まあ、だまされたと思って、読んでみることを強くすすめますよ。読み終えたとき、これが「仏教」のデフォルトだと理解していることだろう。



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目 次

はじめに
第1回 仏教はヤバいもの
第2回 仏教の核心
第3回 仏教の基本
第4回 無我と輪廻をめぐって
第5回 「世界」を終わらせるということ
第6回 仏教の実践
第7回 「悟り」はあるかないか問題
あとがき
解説: 宮崎哲弥


著者プロフィール

魚川祐司(うおかわ・ゆうじ)
1979年、千葉県生まれ。著述・翻訳家。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学(インド哲学・仏教学専攻)。2009年末よりミャンマーに渡航し、テーラワーダ仏教の教理と実践を学びつつ、仏教・価値・自由等をテーマとした研究を進めている。処女作『仏教思想のゼロポイント「悟り」とは何か』(新潮社)が話題となる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<関連サイト>

ミャンマー仏教書ライブラリー ~英緬仏教書の翻訳・公開~(著者のサイト)


<ブログ内関連記事>

書評 『知的唯仏論-マンガから知の最前線まで ブッダの思想を現代に問う-』(宮崎哲弥・呉智英 、サンガ、2012)-内側と外側から「仏教」のあり方を論じる中身の濃い対談

書評 『仏教要語の基礎知識 新版』(水野弘元、春秋社、2006)-仏教を根本から捉えてみたい人には必携の「読む事典」


上座仏教全般と初期仏教

『ブッダのことば(スッタニパータ)』は「蛇の章」から始まる-蛇は仏教にとっての守り神なのだ

今年も参加した「ウェーサーカ祭・釈尊祝祭日 2010」-アジアの上座仏教圏で仕事をする人は・・

タイのあれこれ (4)-カオパンサー(雨安吾入り)

書評 『「気づきの瞑想」を生きる-タイで出家した日本人僧の物語-』(プラ・ユキ・ナラテボー、佼成出版社、2009)-タイの日本人仏教僧の精神のオディッセイと「気づきの瞑想」入門


ミャンマーの上座仏教(=テーラヴァーダ仏教)

ミャンマー再遊記(8)-熱心な上座仏教徒たち

三度目のミャンマー、三度目の正直 (6) ミャンマーの僧院は寺子屋だ-インデインにて (インレー湖 ⑤)

三度目のミャンマー、三度目の正直 (8) 僧院付属の孤児院で「ミャンマー式結婚式」に参列


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2015年の年末に「異種ジャンル」のマンガをまとめ読み


マンガを読むときは、マンガばかり読んでいたいという気持ちがある。

それにもっとも適しているのは、続きもののマンガを第1巻から最終巻まで一気読みすることだが、ジャンルの異なるマンガを脈略なくまとめて読むのも悪くない。

前者が「通時的」(=ディアクロニック)な読みだといえば、後者は「共時的」(=シンクロニック)な読みといってもいいだろう。同時代の異なる諸相をマンガをつうじて横断的に読むのである。

というわけで、ことし2015年の年末の一日をマンガを読んで過ごした。
  
まずは、続きものの最新刊から。

『重版出来⑥』(松田奈緒子、小学館、2015)
『きのう何食べた?⑪』(よしながふみ、講談社、2015)
『いちえふ③』(竜田一人、講談社、2015)
『孤独のグルメ②』(谷口ジロー、扶桑社、2015)

それぞれザックリとしコメントをつけておこう。

『重版出来⑥』はマンガ出版の世界を描いた「仕事マンガ」の最新刊。このマンガはなかなか続きそうだ。

『きのう何食べた?⑪』はゲイカップルが主人公の「料理マンガ」。もうすでに11巻。変わらないようで、ゆっくりと確実に変化している人生を描いている。

『いちえふ③』は福島第一原発の内部を現場作業員の視点で描いた「仕事マンガ」。だが、なんとこの第3巻でひとまず終了というのは残念。作者がフィールドワークできない以上、仕方ない。

『孤独のグルメ②』は、「食事マンガ」だが、「飲食もの」ではない。なぜなら主人公は下戸だから酒を飲まない。この第2巻は、なんと18年ぶり(!)の続刊。この機会に第1巻も読み返してみたが、18年のブランクをまったく感じさせないのはプロの技だなあ。

つぎに、まったく知らないマンガをネット上の評判だけを頼りに読んでみた。

●『ねじの人々①』(若木民喜、小学館、2015)
『流転のテルマ①』(蔵西(くらにし)、講談社、2014)

『ねじの人々①』(若木民喜、小学館、2015)は「哲学マンガ」。こういうジャンルができてきたというのは面白い。意外と面白いので哲学入門にはいいかも。

『流転のテルマ①』(蔵西(くらにし)、講談社、2014)は、本格的なチベットものマンガ。これはじつに面白い。つづけて2巻と3巻も読みたくなった。作者の蔵西(くらにし)は、チベット大好き人間のようだ。もちろんチベットの漢字表記の西蔵を逆さにしたペンネーム。ことし最大の収穫かな?

 こんなふうに脈略なくマンガを読むのもよいものだ。マンガ読むときは、マンガばかり読んでいたいからね。







<ブログ内関連記事>

書評 『仕事マンガ!-52作品から学ぶキャリアデザイン-』(梅崎 修、ナカニシヤ出版、2011)-映画や小説ではなくなぜ「仕事マンガ」にヒントがあるのか?

『重版出来!①②③④⑤~』(松田奈緒子、小学館、2013~)は、面白くて読めば元気になるマンガだ!

マンガ 『きのう何食べた ⑩』(よしながふみ、講談社、2015)-50歳台になっても自分で料理してスタイルを維持しつづける主人公

マンガ 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 ①』(竜田一人、講談社、2014)-廃炉作業の現場を作業員として体験したマンガ家による仕事マンガ


■マンガの全巻一気読み

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み

マンガ 『20世紀少年』(浦沢直樹、小学館、2000~2007) 全22巻を一気読み

『取締役 島耕作』 全8巻を一気読み




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2015年12月29日火曜日

映画『完全なるチェックメイト』(2014年、アメリカ)をみてきた(2015年12月27日)-米ソ冷戦時代を背景に世界チャンピオンとなったアメリカ人天才チェスプレイヤーの半生を描いたヒューマンドラマ


映画 『完全なるチェックメイト』(2014年、アメリカ)を東京・日比谷のTOHOシネマズ・シャンテでみてきた(2015年12月27日)。米ソ冷戦時代を背景に、チェスの世界チャンピオンとなったユダヤ系アメリカ人の天才(prodigy)の半生を描いたヒューマンドラマである。

この映画のハイライトは、なんといっても頂上対決となった1972年の世界チャンピオン決定戦。東側世界の代表であるソ連のチェス・チャンピオンのボリス・スパスキーと、西側世界の代表である米国のチェスチャンピオンのボビー・フィッシャーの、チェスボード上の死闘である。

頂上対決が行われたのはアイスランドの首都レイキャヴィク。頂上対決が行われた1972年は、ベトナム戦争末期。世の中は騒然としていたが、チェスプレイヤーには世の中の動きなど眼中にはない。ひたすら対決相手の棋譜を研究し、猛烈な演算スピードで自分の打ち手を考え抜くのみだ。


原題は、Pawn Sacrifice となっている。チェスには詳しくないとこれだけではピンとこないが、調べてみるとポーン(pawn)とは、チェスの駒のひとつで将棋でいえば「歩」(ふ)にあたるものだ。直訳すると、「ポーンの犠牲」となる。

『研究社英和辞典』には、以下のように説明されている。

【チェス】 ポーン,歩 《★ 1 ますずつ前に進む; ただし最初に動かす時は 2 ます進むこともできる; 斜め前の敵を捕獲する

(チェスの駒のひとつ「ポーン」 wikipedia掲載画像を筆者加工)


主人公のボビー・フィッシャーは、アメリカ生まれのユダヤ人。実際の人物がどうだったのかはさておき、映画の設定では両親は離婚し、母親はロシア出身のユダヤ系インテリで共産主義シンパとなっている。母子間の会話は英語だが、母親とその友人関係の会話はロシア語で行われている。

主人公ボビー・フィシャーのロシア嫌い、ソ連嫌い、共産主義嫌いのルーツがそこらへんにあることを暗示しているようだ。ボビーのチームに、チェス有段者の黒衣のカトリック司祭が同行しているのも、バチカンが反共姿勢をとっていた冷戦時代という時代背景を考えると不自然さはない。

そもそもチェス以外にはほとんど関心がないという天才肌の人物で、日本流にいうならチェスの神様に魅入られた男というべきだろう。つまるところパラノイア(=偏執的)で、限りなく狂気に近い天才ということだ。

日本公開版の公式サイトには、ボビー・フィッシャーは以下のように記述されている。

Bobby Fischer/ボビー・フィッシャー (1943年3月9日~2008年1月17日) アメリカ、シカゴ生まれ。チェスの世界チャンピオンになるも、あえてタイトルを放棄したり、事実上の国家反逆罪で国を追われ、長年にわたり世界を放浪するなど、その謎めいた行動をとり、数奇な人生を送った人物としても有名。2000年代初頭には日本の蒲田でも生活していた。晩年はスパスキーとの世界戦をおこなったレイキャビクで余生を送る。2008年、奇しくもチェス盤の目の数と同じ64歳で死去。

(米国版のポスター)

『ビューティフルマインド』の主人公の数学者ナッシュを髣髴(ほうふつ)とさせるものがある。おなじく米ソ冷戦時代の人物だが、最終的には回復してノーベル賞を受賞したナッシュと比べると、ボビー・フィッシャーは狂気の果てまで言ってしまったのか、とう気がしなくもない。

原題は、Pawn Sacrifice となっているが、犠牲にしたのはポーン(=歩)だけでなく、自らの人生だったのかもしれない。世界チャンピオン獲得の代償はあまりにも大きかったというべきか。

チェスに詳しくないわたしのような人間でも、手に汗握りながらおおいに楽しむことができた。





<関連サイト>

映画『完全なるチェックメイト』公式サイト PAWN SACRIFICE

トビー・マグワイア主演 映画『完全なるチェックメイト』予告編(YouTube)


Jew or Not Jew: Boris Spassky
・・母親がユダヤ系というウワサは本人が否定、とある

Jew or Not Jew: Bobby Fischer
・・母親がユダヤ系なのでユダヤ人なのだが、本人は反ユダヤ的な言動が多い、とある


<ブログ内関連記事>

■チェスと勝負事

書評 『謎のチェス指し人形「ターク」』(トム・スタンデージ、NTT出版、2011)-18世紀後半のオートマトンにコンピュータとロボットの原型をさぐる「知の考古学」

書評 『修羅場が人を磨く』(桜井章一、宝島社新書、2011)-修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!


冷戦時代の米ソ関係

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋、2008)-第二次大戦後の米国を設計したシンクタンクの実態を余すところなく描き切ったノンフィクション

書評 『ソ連史』(松戸清裕、ちくま新書、2011)-ソ連崩壊から20年! なぜ実験国家ソ連は失敗したのか?

書評 『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』(松本佐保、中公新書、2013)-「近代」がすでに終わっている現在、あらためてバチカン生き残りの意味を考える
・・「反共」の立場から、バチカンと米国は同床異夢のタッグを組んでいた

⇒ 映画のなかにでてくるチェスプレイヤーの黒衣の司祭の存在は・・

「JFK-その生涯と遺産」展(国立公文書館)に行ってきた(2015年3月25日)-すでに「歴史」となった「熱い時代」を機密解除された公文書などでたどる
・・ケネディ時代にキューバをめぐって米ソは一触即発の危機を体験した


ロシア系ユダヤ人

書評 『グーグル秘録-完全なる破壊-』(ケン・オーレッタ、土方奈美訳、文藝春秋、2010)-単なる一企業の存在を超えて社会変革に向けて突き進むグーグルとはいったい何か?
・・創業経営者の一人セルゲイ・ブリンはソ連から米国に移住した数学者の息子

資本主義のオルタナティブ (3) -『完全なる証明-100万ドルを拒否した天才数学者-』(マーシャ・ガッセン、青木 薫訳、文藝春秋、2009) の主人公であるユダヤ系ロシア人数学者ペレリマン
・・「数学をつうじて神に近づこうとする姿勢」

書評 『ロシア革命で活躍したユダヤ人たち-帝政転覆の主役を演じた背景を探る-』(中澤孝之、角川学芸出版、2011)-ユダヤ人と社会変革は古くて新しいテーマである

本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987) 
・・プログラミング能力と『タルムード』の議論で培われたユダヤ的発想との親和性


天才の運命

映画 『イミテーション・ゲーム』(英国・米国、2014年)をみてきた(2015年3月14日)- 天才数学者チューリングの生涯をドイツの暗号機エニグマ解読を軸に描いたヒューマンドラマ

最近ふたたび復活した世界的大数学者・岡潔(おか・きよし)を文庫本で読んで、数学について考えてみる
『ビューティフルマインド』の数学者ナッシュのような・・



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映画『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014年、独仏伊露・カナダ・ポーランド・トルコ)をみてきた(2015年12月27日)-トルコ人監督が100年前のアルメニア人虐殺をテーマに描いたこの映画は、形を変えていまなお発生し続ける悲劇へと目を向けさせる


映画 『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014年、独仏伊露・カナダ・ポーランド・トルコ)を、東京・有楽町の角川シネマでみてきた(2015年12月27日)。100年前にトルコでおきたアルメニア人虐殺をテーマに、トルコ人映画監督が描いたヒューマンドラマだ。

いまからちょうど100年前の1915年、当時のオスマントルコ帝国の東部で、アルメニア人たちが平和に暮らしているコミュニティから物語は始まる。アルメニア人はキリスト教徒であるが、寛容の精神に貫かれたオスマン帝国においては、マジョリティのムスリムと長年にわたって平和共存してきたのだった。

豊かではないが、とくに変哲もない幸せな生活を送っていた主人公一家であったが、それは突然破られてしまう。1915年は第一次世界大戦が始まってから2年目にあたる年、ドイツ側についたトルコは英国と戦争状態にあったのだ。無慈悲にも憲兵たちに連れ去られ強制労働に従事させられる主人公、残された家族と無慈悲にも引き離されてしまうしまう。主人公の長いオディッセイはその日から始まった。

『消えた声が、その名を呼ぶ』という日本公開版のタイトルは、文字通り「声を消された」主人公の心の叫びを表現したものだ。英語タイトルはシンプルに "CUT"(カット)。ポスターにはアルメニア語の書体を模したタイトルが描かれている。


英語タイトルの Cut とは「切断」という意味だ。主人公を含めたアルメニア人の男たちは強制労働を強いられたあげく、ある日突然のこと、のどを掻き切られて処刑される。あたかも羊の息の根を一瞬にして止めるときにような遊牧民らしいやりかただ。自称「イスラーム国」の処刑のやり方もまた同じである。

のどを掻き切られて処刑されたアルメニア人の男たちだが、幸運なことに主人公だけは死を免れる。処刑執行人のトルコ人に慈悲の心があっため息の根を止められなかったのだ。主人公は生き延びることはできたが、しかし気管を切断されたため声を失ってしまう。それが日本語タイトルの「消えた声」の意味である。

「声を消された」主人公は、その後さまざまな幸運に助けられながらも砂漠を西へと横断し、東地中海はシリアのアレッポに落ち着くことになる。大戦終了後、離散した家族を求めてレバノン、そして大西洋の対岸のキューバ、北米のフロリダ、米国北西部のミネアポリス、さらにはノースダコタまで、生きる支えとなっていた双子の娘たちを探すオディッセイとして、長い長い漂流の旅が続けられる。携帯電話やスマホが普及している2015年現在では想像もつかない状態のなかで、である。

「実話にもとづく」という表示がなされていなかったので、おそらく主人公を中心とした物語はフィクションだろう。だが、その物語の背後にある「消された声」は無数にあったはずなのだ。消された声、奪われた声 を主人公である若い父親に象徴させているのであろう。


「アルメニア人虐殺」において、アルメニア側からは150万人が殺されたと主張する。「虐殺」した側とされるトルコでは6万人弱だと主張する。正確なところはわからない。いずれが正しいのかもわからない。「消えた声」の詳細はわからないまま葬りされれてしまっている。だからこそ、意訳ともいうべき日本語タイトルは、映画のメッセージをダイレクトに伝えているといえるのだ。

事件が発生した1915年という年に驚かなくてはならない。「アルメニア人虐殺」のわずか20年後にナチスドイツによる「ユダヤ人虐殺」が開始されているのである。「ユダヤ人虐殺」は、けっして「消された声」ではないが、「アルメニア人虐殺」はそれ自体が多くの人々の意識に上ることすらない。

第一次世界大戦はオスマントルコ帝国の崩壊をもたらしたが、帝国末期の混乱状況においてオスマン帝国の特色であった「寛容の精神」は失われ、不寛容の嵐が吹き荒れたのである。オスマン帝国崩壊後、支配下にあったアラブ民族もアルメニア民族も独立を果たすことになる。アラブ民族独立のために奔走したのがアラビアのロレンスであった。

この映画の前半を見ていて、いままさに進行中の自称「イスラーム国」による住民の蹂躙(じゅうりん)を想起してしまうのは、のどを掻き切る処刑シーンだけではない。英仏による帝国分割の密約にもとづいて建設されたイラク解体後の自称「イスラーム国」の支配が、ふたたび同じ問題を生み出しているからだ。

自分たちの意思にかかわりなく占領され、自由を奪われた住民たちの苦難、そのなかから、からくも難民として脱出することのできた人々のことが重ねあわされるからだ。

島国・日本に生きていると体感しにくいが、規模の大小はあれ、このような惨事がたびたび起きてきた。ユーラシア大陸でも、南北アメリカ陸でも、アフリカ大陸でも。そして犠牲になるのはいつも一般人である。大多数は「声なき人々」である。

この映画は、けっして100年前の過去を描いたものではない。虐殺した側を糾弾する内容でもない。その後の100年間に起きた、そしていまこの現在も世界各地で起きている人道上の悲劇に目を向けさせるための映画なのだ。





<関連サイト>

映画『消えた声が、その名を呼ぶ』 公式サイト

映画『消えた声が、その名を呼ぶ』 トレーラー(YouTube)
・・日本語字幕あり


僕が「アルメニア人大虐殺」を題材にした理由 ファティ・アキン監督が語るタブーへの挑戦(壬生智裕 :映画ライター、東洋経済オンライン、2016年1月9日)
・・「この映画を作ったことで、特にファシスト系の人から死の宣告を受けて、脅されることもあった。でもそんなことをされると逆にアドレナリンが放出されてくるんだ。それは最高のドラッグみたいなもんだよね。(・・中略・・) ある種のパブリックエネミー(社会の敵)になってしまったんだよね。彼らは本気で僕を殺そうとは思っていないんだろうけども、少なくとも気軽にトルコに行けなくなったという事実が僕にはある。」(ファティ・アキン)

(2016年1月10日 情報追加)

「渋沢栄一は国の恩人」 アルメニア難民支えた知られざる歴史」(NHK首都圏ナビ 2021年10月6日)
・・「今年7月、東京オリンピックの開会式に出席するため訪日中だったアルメニアのアルメン サルキシャン大統領は東京都北区を訪れ、渋沢栄一のひ孫、渋沢雅英さん(96)にメダルを手渡しました。いまから100年前、渋沢がアルメニア難民に差しのべた支援に対する感謝の念を表すためです。「日本資本主義の父」渋沢栄一が晩年に尽力した人道支援、国際貢献についてお伝えします」

(2022年4月20日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

アルメニア人と中近東のキリスト教徒

ブランデーで有名なアルメニアはコーカサスのキリスト教国-「2014年ソチ冬季オリンピック」を機会に知っておこう!

書評 『新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒-』(菅瀬晶子、NIHUプログラムイスラーム地域研究=監修、山川出版社、2010) ・・中東においては、イスラームよりも、おなじ一神教のキリスト教のほうが歴史がはるかに長い!


■虐殺と難民発生

欧州に向かう難民は「エクソダス」だという認識をもつ必要がある-TIME誌の特集(2015年10月19日号)を読む
・・シリア難民は虐殺を逃れてきた人々だ

映画 『アクト・オブ・キリング』(デンマーク・ノルウェー・英国、2012)をみてきた(2014年4月)-インドネシア現代史の暗部「9・30事件」を「加害者」の側から描くという方法論がもたらした成果に注目!
・・1965年のインドネシアでは100万人以上が虐殺された

ボリウッド映画 『ミルカ』(インド、2013年)を見てきた-独立後のインド現代史を体現する実在のトップアスリートを主人公にした喜怒哀楽てんこ盛りの感動大作
・・インド独立後にパキスタンとの国境地帯で起きた大虐殺

ハンガリー難民であった、スイスのフランス語作家アゴタ・クリストフのこと
・・1956年のハンガリー革命後、難民となってスイスに定住したハンガリー人作家

『移住・移民の世界地図』(ラッセル・キング、竹沢尚一郎・稲葉奈々子・高畑幸共訳、丸善出版、2011)で、グローバルな「人口移動」を空間的に把握する


自称「イスラーム国」 

書評 『イスラム国-テロリストが国家をつくる時-』(ロレッタ・ナポリオーニ、村井章子訳、文藝春秋、2015)-キーワードは「近代国家」志向と組織の「近代性」にある

「イスラーム国」登場の意味について考えるために-2015年1月に出版された日本人の池内恵氏とイタリア人のナポリオーニ氏の著作を読む



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「リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」(Bunkamura)にいってきた(2015年12月27日)-かつて隆盛を誇った産業都市リバプールの同時代の企業家たちが収集した作品の数々

(ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「デカメロン」 1916年)

「リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」(Bunkamura)にいってきた(2015年12月27日)。かつて産業革命の中心地のひとつで隆盛を誇った産業都市リバプールの企業家たちが、同時代の画家たちの作品として収集した「ラファエル前派」の作品の数々である。

港湾都市リバプールといえばビートルズを生み出した町として有名だが、彼らが生まれた頃はすでに衰退過程にあった。だが、産業都市の担い手であった企業家たちは、大きな遺産をこの町に遺したというわけだ。これこそ実業家の地域貢献の最たるものというべきだろう。かつてバブル期の日本で流行語となったメセナを地で行くものというべきだ。

今回の美術展は、リバプールにある3つの美術館の所蔵品から、「ラファエル前派」の全体像がわかるような作品が出品されている。

「ラファエル前派」とは、ちょうどいまから500年前のイタリア・ルネサンスを代表する画家ラファエロの前に戻れ(!)という意味の芸術運動である。

大学時代以来、わたしの好みのひとつである19世紀後半の「ラファエル前派」。わたしの個人的な好みは、年代順にジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、エドワード・バーン=ジョーンズ、とくに後者の二人となるのだが、今回の美術展はよく目配りのきいたものとなっている。

今回の美術展は4部構成になっている。


Ⅰ. ヴィクトリア朝のロマン主義者たち
Ⅱ. 古代世界を描いた画家たち

Ⅲ. 戸外の情景

Ⅳ. 19世紀後半の象徴主義者たち


ミレイといえば、テート美術館所蔵の「オフィーリア」がその代表作だが、今回の美術展で出品されている「春 林檎の花咲く頃」(1859年)もすばらしい。

(ジョン・エヴァレット・ミレイ 「春 林檎の花咲く頃」 1859年)

イタリア系英国人ダンテ・ガブリエル・ロセッティもまた「ラファエル前派」を代表する画家で詩人だが、古代の女預言者を描いた 「シビラ・パルミフェラ」(1865~1870年)もすばらしい作品だ。

 (ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「シビラ・パルミフェラ」1865~1870年)

「ラファエル前派」の後期を代表するエドワード・バーン=ジョーンズの作品としては、「レバノンの花嫁」(1891年)という大作、 「フラジオレットを吹く天使」(1878年)がすばらしい。

(エドワード・バーン=ジョーンズ 「レバノンの花嫁」 1891年)


(エドワード・バーン=ジョーンズ 「フラジオレットを吹く天使」1878年)


日本でも最近ふたたび「ラファエル前派」の人気が高まっているが、今回はいわゆる定番の作品ではなく、日本ではまだまだ知られていない作品が多く出品されているのが特色というべきだろう。

なんと挿絵画家として著名なケイト・グリーナウェイの作品も1点展示されていることも付記しておこう。

「ラファエル前派」という19世紀後半の英国に始まった美術運動は、500年前のラファエロに始まる「近代」以前の「中世」に戻れという方向性、すなわち「脱近代」という方向性だけでなく、じつは産業社会が生み出した成果を存分に使用するという性格のものであった。復古ではなく、あらたな創造なのである。

だからこそ、同時代の成功した実業家たちが「ラファエル前派」の画家たちの作品を購入したのではないかと思うのである。「ラファエル前派」は、資本主義の先進国であった英国において、当時の最先端をいくものであったのだ。そんな観点から鑑賞してみるのもいいかもしれない。





<関連サイト>

「リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」(Bunkamura)公式サイト


(マイコレクションから D.G. ロセッティによる Be Loved ただし今回の出品ではない)



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2015年12月27日日曜日

地面に点在する「モグラ塚」-足元を見よ!③


地面にこんもりと土が盛り上がっている。こんな穴が点在しているとき、それは「モグラ塚」であるとわかる。

「足元を見よ」シリーズの3回目は、コンクリートやアスファルトで舗装された硬い地面ではない。比較的やわらかい地面で目にするものだ。「モグラ塚」は英語では molehill(モールヒル)という。mole(モール) はモグラのこと。

モグラは地下世界の住人である。地下にトンネルを掘って、そのなかで生きている。「潜る」という動詞の変化形が「潜ら」なのであろうと思いたくなるが、そうではないようだ。地下に潜るモグラはトンネル工事の象徴としてマスコット扱いされることも多い。

目がちっこくてかわいい(?)モグラの姿形は誰もが知っているにもかかわらず、めったに地上に姿を現すことはない。じっさいにホンモノのモグラを見た人はそう多くはないのではないか?

ごくたまにだが、「モグラ塚」の近くで、モグラが仰向けになってひっくりかえっているのを目にすることがある。

それはたまたま地上近くに這い出てきたときに、ノラネコが穴から引きずり出したからだ。生まれながらのハンターであるネコは、狭い穴のなかに入ってネズミだけでなくモグラも捕まえる。ただし、捕まえることに意義があっても、捕食することには関心がないようだ。だから、死んだモグラがそのまま放置されているわけだ。

「人間はゲームセンターでモグラを叩くが、ネコはモグラを引きずり出す」、というわけですな(笑)。とはいえ、モグラ退治には「ネコの手」も借りたい(?)というのは、あんがい人間のホンネかもしれない。

「アリの穴」と違って「モグラ塚」は比較的大きいので目に付くものだ。土の地面のを歩くときには足元に目を向けてみるのもいいだろう。だが、なかなかモグラを目にすることはないだろうが・・・






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足元の「G」に注目-足元を見よ!② 


足元を見よ!①では、「足元の十字を見よ!」と題して、ふだんは目にすることがないであろう、十字を刻んだ小型の石柱について取り上げた。

さて、今回は同様に日本のいたるところに存在する、足元の「G」のマークに注目していただくこととしよう。

先のブログ記事では「十字」を取り上げたことから、読者のなかには「G」といえば例のあれだな、とすぐにピンと人も来る少なくないだろう。

結論を先に述べておくと、足元の G は Gas(ガス)の G である。つまりガス管がこの下に埋まってますよという標識だ。フリーメーソンに登場するGではないので念のため(笑)。

道路工事をする際に問題になるのが、地下になにが埋まっているのかじっさいに掘ってみないと正確にはわからないことがあるということだ。地下には水道管や下水道管、NTTの通信ケーブルなどさまざまな管が埋められている。近年は電線地下化の動きもあるので、道路の下はさらに複雑化する傾向にある。

地下埋設物のなかでも、もっとも危険なのがガス管だ。ガス管を切断してしまったっりするとガス漏れが発生し、火災や爆発事故にもつながりかねない。だから、ガス管の存在を示すための標識が道路に設置されているのである。

ガス管を示す G は、だからそれほど重要な存在なのである。

さきにフリーメソンの G のマークについて言及したが、フリーメーソンにおいても G の存在はきわめて大きく重要なものがある。



(フリーメーソンのシンボルマーク wikipediaより)

フリーメーソン(Freemason)というと秘密結社というイメージだけが一人歩きしているが、もともと中世ヨーロッパの建築ギルドであったフリーメソンは、建築に必要な計測のための定規とコンパスをシンボルにしている。メーソン(Mason)とは石工職人のことである。

中央の「G」は至高存在を意味し、大文字で始まる神(God)と幾何学(Geometry)、栄光(Glory)、寛容(Grandeur)なども意味しているという。さらにはグノーシス(Gnosis)の意味も込められているという説もある。グノーシスは霊と肉体の二元論を説く古代宗教で、キリスト教世界では異端とされてきた。

フリーメーソンは啓蒙主義の担い手として、フランス革命においては大きな役割を果たしたことも知っておくべきことだ。啓蒙主義は近代を方向づけた思想である。

連想ついでに記しておくが、まんなかにGのマークがくるのは、プロ野球の読売ジャイアンツロゴデザインもそうである。読売ジャイアンツのロゴは読売(Yomiuri)の「Y]とジャイアンツ(Giants)の「G」を組み合わせたもので、おそらく大リーグのニューヨーク・ジャイアンツの真似だと思うが、奇しくもフリーメーソンのシンボルマークと似ているのは不思議なことだ。

(読売ジャイアンツのロゴ wikipediaより)


本年度は優勝できなかったとはいえ、「巨人軍」もまた野球界に君臨する存在である。「G」というグレート(Great)で至高の存在(?)に対する強いこだわりが、潜在意識のなかに存在するのかもしれない、かな? 足元を引っ張る作用の重力(Gravity)もまた「G」であるしね。

そんなことを想起しながら、足元を見ながら歩いてみると面白いかもしれない。とはいえ、足元に気を取られてると危険ですよ。くれぐれも前方には気をつけるように!






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書評 『陰謀史観』(秦 郁彦、新潮新書、2012)-日本近現代史にはびこる「陰謀史観」をプロの歴史家が徹底解剖
・・「本書で取り上げられる「陰謀説」は、「田中上奏文」(・・いわゆる田中メモランダム) 、張作霖爆殺事件、第二次世界大戦、東京裁判、コミンテルン、CIA、ユダヤ、フリー メーソンといった日本近現代史の定番といった数々である。」



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