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2016年7月7日木曜日

書評 『世界最強の女帝メルケルの謎』(佐藤伸行、文春新書、2015)-メルケル首相をつうじて現代ドイツとEUを知る


2016年6月24日に英国の国民投票で「EU離脱」を選択してから、すでに2週間近くたつ。

「EU離脱」は、さすがにトップニュースではなくなりつつあるが、物事の本質というものは騒がれなくなってから初めて明らかになってくるものだ。 ニュースで報道されない本質を理解するためには、事態が沈静化し、やや冷却してきた段階で、反対側の視点や立場から見る必要もある。いわゆる「複眼的思考」というやつだ。

「離脱する側」の英国に対して、「離脱」される側にあるのはEU。そのEUの中核に現在位置するのがドイツである。したがって、今回の「EU離脱」問題は、簡単にいってしまえば英国とドイツとの関係となる。英国とドイツは、「リーマンショック」後の「ユーロ危機」で対立を深めていた。

そのドイツを10年にわたって率いてきたのがメルケル首相。東西分断時代に東ドイツで35年間すごした物理学者である。そういう経歴もあって、さまざまな謎に包まれている。

 『世界最強の女帝メルケルの謎』(佐藤伸行、文春新書、2015)は面白い本だ。この本は、基本的にアンゲラ・メルケルという政治家の生涯をたどることによって、彼女にまとわりつくさまざまな「謎」を解明することを第一義にしているが、1954年生まれで東ドイツ出身、ポーランド系ドイツ人であるメルケルについて語ることは、東西分断から「再統一」を経て現在に至る現代ドイツ史を語ることにもなる。

人間というものは、じつに忘れっぽい生き物で、メルケルの前のドイツの首相や、「ドイツ再統一」時点の首相が誰だったか覚えている人はあまりいないだろう。メルケルはドイツ再統一を成し遂げたコール首相の秘蔵っ子でありながら、造反して権力を奪取した政治家。そして本当の意味でドイツ経済を復活させたのは、メルケルではなく前首相のシュレーダー時代の改革のおかげである。

欧州政治におけるメルケルの裁量が巨大化したのである。だが、それは必ずしもメルケルの資質と手腕によるものではなかった。冷戦終結にともなうEUの東方拡大という大きな変化により、ドイツの地政学的パワーが飛躍的に増大したことの帰結であって、メルケルはたまたまその局面に居合わせた指導者である。(P.244) 

もちろん、メルケルの力量を過小評価しているわけではない。だが、実質的にEU=ドイツとなっている現状、ドイツ首相がEUの顔になっているのが現実である。 ドイツは地政学的に見れば「大陸国家」であり、中欧(=中欧ヨーロッパ)の中核に位置する大国であるが、両隣にはロシアとフランスを抱えている。ドイツは強大化すると制御できなくなり、過去2回にわたって世界大戦を引き起こしている。「島国」で「海洋国家」の英国は、大陸とはつねに距離感を計算しながら付き合ってきた。

そういう大きな視点から「大陸国家」としてのドイツ、「海洋国家」としての英国を見れば、おのずから「英国のEU離脱」の本質も見えてくるというものだ。日本もまた「海洋国家」であり、ドイツとはそもそも大きく異なる存在である。

メルケル首相をつうじてドイツを知る。ドイツとロシアの関係、ドイツと中国の関係、ドイツとアメリカの関係をつうじてドイツの立ち位置を知る。 読む意味のある本だと思う。わたしがとくに面白く思ったのは、メルケルが政治に対して理系的なアプローチを取っているという点。仮説と実験による検証、である。このほか、プーチンやオバマなど、メルケルと関係する政治指導者たちの描写が興味深い。

再統一後のドイツが、旧東ドイツを吸収するにあたって通貨の交換比率で寛大な態度で臨んだことが、巨大な財政赤字を生み出したこと、その結果、「欧州の病人」とまで言われていたことなど嘘のような現在の状況だが、そんな現在のドイツは、「EUあってのドイツ」であり、「ドイツあってのEU」であるといっても過言ではない。

ドイツが今後どうなっていくかはわからないが、ドイツの将来はEUの将来でもある。両者は一体なのである。メルケル首相に難しい局面の舵取りが期待されていることは間違いない。まだまだ謎の多い人物であるが、今後も要注視である。




目 次
はじめに-「危険な女帝」か「聖女」か
1. 培養基の東ドイツ
2. メルケル立つ
3. 統一宰相の「お嬢ちゃん」
4. 魔女メルケルの「父親殺し」
5. 独中ユーラシア提携の衝撃
6. メルケルを盗聴するアメリカ
7. ロシア愛憎
8. メルケル化した欧州
9. リケジョのマキャベリスト
あとがきに代えて-中韓の術中に嵌まるなかれ

著者プロフィール
佐藤伸行(さとう・のぶゆき)
1960年山形県生まれ。ジャーナリスト。追手門学院大学経済学部教授。1985年、早稲田大学卒業後、時事通信社入社。1990年代前半はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢を取材。1998年から2003年までウィーン支局に勤務し、旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題をカバー。2006年から2009年までのワシントン支局勤務などを経て、2015年から現職。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>


「再統一」後のドイツ現代史

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?
・・「本書を読むと、先進工業国という共通性をもちながら、およそドイツ人と日本人は似て非なる民族であることが手に取るようにわかる。ユーラシア大陸の東端にある島国と、大陸の「中欧」国家であるドイツとは地政学的条件もまったく異なるのである。陸続きで何度も国土を蹂躙された経験をもつドイツ人の不安心理は長い歴史経験からくるものであろう。(・・中略・・) もちろん日本人の「根拠なき楽観」は大きな問題だが、といって一概にドイツを礼賛する気にはなれない。なんだかナチスドイツに一斉になびいた戦前のドイツを想起してしまうからだ。」 怒濤のように「反原発」になだれ込んだドイツ。なにか危ういものを感じるのはわたしだけだろうか?

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている
・・「いい意味でも悪い意味でも、いまやドイツは欧州の中核にある。ドイツがいかなる行動をとるかによってユーロの運命は決まるのである」

ドイツを「欧州の病人」から「欧州の優等生」に変身させた「シュレーダー改革」-「改革」は「成果」がでるまでに時間がかかる
・・大連合によって成立したメルケル政権は「シュレーダー改革」の延長線上にある

ドイツが官民一体で強力に推進する「インダストリー4.0」という「第4次産業革命」は、ビジネスパーソンだけでなく消費者としてのあり方にも変化をもたらす

書評 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる-日本人への警告-』(エマニュエル・トッド、堀茂樹訳、文春新書、2015)-歴史人口学者が大胆な表現と切り口で欧州情勢を斬る 
・・「気がついたら出現していた「ドイツ帝国」。はたしてドイツ人に帝国をマネジメントしていく覚悟と能力があるのか? 「ドイツ帝国」がふたたび世界の混乱要因となるのではないかという著者の懸念と憂慮は、大いに傾聴に値する」

書評 『ドイツリスク-「夢見る政治」が引き起こす混乱-』(三好範英、光文社新書、2015)-ドイツの国民性であるロマン派的傾向がもたらす問題を日本人の視点で深堀りする
・・「21世紀になっても、依然として「夢見る人」というロマン派的な思考回路をもつドイツ人が、またなにか大きな問題を引き起こして道を誤るではないかと懸念する声があるのも、当然のことかもしれない」


旧東ドイツ

ベルリンの壁崩壊から20年-ドイツにとってこの20年は何であったのか?
・・メルケルは東ドイツで35年間過ごした人である

映画 『善き人のためのソナタ』(ドイツ、2006)-いまから30年前の1984年、東ドイツではすでに「監視社会」の原型が完成していた
・・「スノーデン事件」で、ドイツのメルケル首相の個人用の携帯電話が、米国の情報機関 NSA によって盗聴されていたことが明らかになったときの過敏な反応は、メルケル氏が東ドイツに生きていた人であることと大いに関係している。」

ドイツ再統一から20年 映画 『グッバイ、レーニン!』(2002) はノスタルジーについての映画?


旧西ドイツ

映画 『バーダー・マインホフ-理想の果てに-』(ドイツ、2008年)を見て考えたこと ・・西ドイツの「1968世代」のなかから生まれた極左テロ組織の末路

(2016年7月18日 情報追加)


 
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